未来への可能性!ピーナッツアレルギーに新規治療候補?

ピーナッツアレルギーのため、日常から遠ざけざるを得ないというケースもあるかと思います。昨今はオーガニック製品や化粧品にもピーナッツ含有の製品も導入されてきています。

ピーナッツが食べれなくて困っている子どもの画像

アレルギーに対する知識と、その対策は日々アップデートされています。私も自己免疫疾患の関連からアレルギーに対して興味があり、日々情報をとっています。その際に興味深い報告がありました。

それは、「ピーナッツアレルギーに対する新規治療候補の可能性が1歩前進した」という報告です。

11月上旬(11月9~13日)に開催されていた学会、ACAAI 2023 Annual Scientific Meeting(米国アレルギー・喘息・免疫学会総会)で発表されていたのですが、ピーナッツアレルギーに対して口腔粘膜免疫療法という新規治療を検証する試験で可能性が見いだされたという事になっています。

報告された研究はコチラ→ACAAI 2023: Novel Toothpaste May Provide New Mechanism for Allergy Immunotherapy

今年は米国カリフォルニアのアナハイムで開催された学会。1年を通してのアレルギー関連の大祭りともいえる学会ですね。

カリフォルニア州オレンジ郡のChildren’s Hospital of Orange Countyに所属している、William Berger医学博士が発表した研究です。この検証は、第I相OMEGA試験として口腔粘膜暴露によりピーナッツアレルギーは緩和できるのか?という仮説を検証した試験です。

まずピーナッツアレルギーはどれくらい問題になっているのかは過去記事にも記載していますのでこちらをご覧ください。

このピーナッツアレルギーを始め、もともとアレルギー治療の大原則としては、アレルゲンとなっている原因物質を徐々に増やしながら接種していき、免疫寛容を生じさせる「経口免疫療法」が主体でした。例えば、ヨーグルトに混ぜたり、アイスクリームに混ぜたりして徐々に減感作していくという手法が標準です。この治療をさらに発展応用をして「口腔粘膜免疫療法」として検証をしたという事になっています。

実際の方法ですが、ピーナッツタンパク質を含む歯磨き粉(INT301:まだ市販されていません)で1日1回歯を磨くだけ。
これで原因物質となるアレルゲンを粘膜を介して減感作していくといった方法です。

侵襲性も少なく、今までのような注射や皮下投与をすることもなく歯を磨くだけで代用ができるのであれば素晴らしい。習慣の中で当たり前に行う歯磨きでピーナッツアレルギーを緩和する事ができるのであれば非常にリーズナブルでもあります。

検証そのものはまだ小規模なもので、ビーナッツアレルギーと診断された18~55歳の成人32人を、48週間にわたってピーナツ歯磨き粉を徐々に増量しながら使用する群と、プラセボを使用する群のいずれかにランダムに割り付けて検証しています。目的としては、安全性を確認することに主眼をおき、また、どの用量がより有用なのかを検証するための試験です。

まず最も重要な安全性については、32人中、5件程で有害事象(副作用)が発言し、腹痛2件、咽頭腫脹、口唇腫脹、歯肉腫脹1件となっていました。今のところ、特段大きな問題ではないとされていますし、比較的軽微なものでもあります。

有効性に関しては、段階的に検討したいた用量で最大用量が最も有効性が高かったとされています。また探索的な評価で、歯磨きをした人はしなかった人に比べて、血清免疫グロブリン(Ig)G4値に有意な変化を示し(P=0.046)、IgE/IgG4比の減少がみられたと報告しています。つまり、ピーナッツアレルギーの度合いが低下していたという結果になっています。

実際に歯磨きをできていた率は97%となっており、さすが生活に根差しているだけあり高い順守率であったようです。

本試験を企画したWilliam Berger氏は「高い奏効率、高い安全性、使いやすさ、そして順守率に基づいて、強固な基盤が確立された」と述べています。次の段階の試験に移行するには申し分ない結果ともいえるでしょう。

過去の報告ではピーナッツアレルギーは非常に厄介なもので、一旦発症してしまうと生涯にわたりピーナッツを含む製品は避けなければならないといわれていました。日本はともかく、ピーナッツ含有製品が多いアメリカでは非常に生活に苦労をしていたでしょう。

当初は「経口免疫療法」でこのピーナッツアレルギーを克服しようとしていましたが、まれに「アナフィラキシーショック」という生命に危険を及ぼすような拒絶反応を示す可能性があり、研究を進めるのは容易ではありませんでした。

いくつかの研究では、ピーナッツの微小片を触らせるところから始めて減感作をしていくくらい慎重であったようです。

それくらい慎重であったはずなのに、なぜ口腔粘膜免疫療法がそのハードルをクリアしたのか?というと、口腔粘膜から吸収されたアレルゲンは接種しているのではなく、そのまま排出されることになる点に着目をして、生体内での反応をごく最小限に抑えているという工夫をしているからリスクを下げているようです。そのためアナフィラキシーショックのリスクを下げる事が出来ていると語られています。

今回の検証は成人対象でしたが、成人を対象としても高い有効率であったことから、これで免疫樹立をうまくすることができれば生活上の拡がりは果てしないものにもなりそうです。

ただこの研究にはまだまだ穴があります。

✅何のピーナッツを使ってどんなタンパク質化の開示情報が不明瞭
✅うがいをすぐにしてしまうと吸収が阻害される可能性
✅どの程度の歯磨きで口腔内の吸収が促されているかわからない
✅成人対象でありアレルギーが問題視される小児期でのデータとなっていない
✅企業がこの研究に参加しているので偏りが出ていないかの懸念
✅そもそもまだ論文化されておらず詳細が分からない
✅アナフィラキシーショック既往歴のある患者はこの試験には含まれていない
✅まだPhase1試験で安全性が主要項目、本当の有効性はまだわからない

などが挙げられています。

そこで、次のステップとしては4~17歳の小児患者を対象とした試験を追加で検証していくとの事です。その先にはより厳格な検証試験であるPhaseⅡ試験とPhaseⅢ試験が待っています。仮に結果が出そろったとしても、まだしばらく時間はかかるものと考えられますね。

過去にはピーナッツパウダー治療薬(パルフォルツィア)というピーナッツを思いがけず接種してしまった際にアレルギー発症を抑えるための予防薬(中和薬みたいなもの)がFDA(アメリカ食品医薬品局)で認可されていますが、今のところ使用は限定的で普及はあまりしていないようです。

今までピーナッツが食べれない子が食べられるようになり喜んでいる姿

いやが応にも、この研究に対する期待感は高まりますね。しかし、今までの医薬品開発はPhase1試験で良好な結果になっていたとしても、その後の試験で頓挫してしまう事も良くあります。そうならないように、良い結果を残し、新しい治療の軸として確立していってもらいたいものです。

もしこれで実証されれば、他のアレルゲン対応の歯磨き粉も開発される可能性があり、用途は急拡大するでしょう。アレルギーで悩む人たちの福音となると共に、新しいビジネスチャンスにも拡がっていくでしょうね。

今後の動向も追っていきたいものです。

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この記事を書いた人

海外での子育て事情や科学論文などから日本の育児に行かせる内容を情報共有していきます。自分の子が発達特性持ちなので、発達障害関連の話題も盛り込むかと思います。

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