【論文から学ぶ】ココが違う?親と小学校の先生のADHD症状認識

我が子も幼稚園卒業を間近にして、就学前に色々と準備を行っています。

うちの子は発達特性を持っており、小学校に上がったときにどうしていこうか悩んでいる所でもありました。

事前に先生には伝えておいた方がいいかな・・とも。その点で、親と先生のADHDに対する認識において事前に知っておいた方が良い論文がありましたので紹介しています。本内容が、「生きづらさ」を感じる子とそれを支える親御さんの参考になりましたら幸いです。

【論文名】Screening of ADHD symptoms in primary school students and investigation of parental awareness of ADHD and its influencing factors: A cross-sectional study(小学生のADHD症状に対する親の認識調査とその影響印紙についての横断研究)

【雑誌】Front Psychol. 2022 Dec 23;13:1070848.

【施設】中国のThe First Hospital of Jilin UniversityのHong-Hua Li氏からの報告

【インパクトファクター】2.99(どれだけ引用されている論文なのかの目安程度)

【査読】あり

この論文は中国から発表された報告ですが、一部、日本の現状でも問題提起として当てはまりそうでしたので引用してます。

子供のADHDを気付いてあげる際の認識が親と学校の教師とで差があるかどうか検証した論文となっています。

結論としては、「小学生の保護者と学校の先生とではADHDの症状の認識が異なっていた」という結果になっています。それではどういう点で異なっていたのでしょうか?

今回の記事ではその点を、具体的に触れていってみたいと思います。

【方法】この試験は小学生1118名の保護者と24名の先生が対象となっています。これらの方々にADHDに関わるスクリーニングのための質問票に回答をしてもらう形で収集しています。

【結果】1118名の中で、

●保護者からの回答で質問票上でADHDと適合したケースは30名(2.7%)

●教師からの回答で質問票でADHDと適合したケースは60名(5.4%)

となっており、ADHDのスクリーニング陽性率は教師の方が2倍ほど保護者よりも高かったという結果になっています。

親側のADHDに対する認識に影響を及ぼす要因は何か?という点も調査していますが、

  1. 母親の子供との関係性が良いか悪いか(関係性が良好ならば親側のADHD検出率が高かった)
  2. 両親が大学卒業者(卒業者の方がADHD検出率が高かった)
  3. 子供の性別(女児の方がADHD検出率が高かった)
  4. 子供の年齢(小学校4年以上でのADHD検出率が高かった)
  5. 医療従事者からの情報(本論文ではカウンセラーや医師などのようです)

子供は親に正確に自分自身の行動を伝える事は困難であるとした上で、診断のためには、親や教師がADHDの症状を正確に認識することが必要であると述べていますが、実際にこれだけ教師と親側の認識に相違がある事が分かったという点が重要としています。

このズレがあるままだと、親と先生の面談の際にすれ違いや誤解も生じやすいかもしれませんね・・。

本論文の引用文献では、親と教師の観察眼や役割の違いから家庭や学校でのADHD症状の違いに関わるかもしれないとも述べられています。

具体的に言うと、

先生側の目線:クラスの妨害をするかどうか?長時間ちゃんと席にいれているか?調和がとれているか?という目線

親側の目線:子供がちゃんと宿題するか?言いつけを守るか?友達と良好な関係でいるか?などの目線

これらのズレもあったりするのかもしれません。

この研究の限界としては、

  1. 参加してくれた先生の母数が少ない
  2. ADHDの意識に関する比較検討は行っていない
  3. 検証数が少ないので今後の再現性をとる研究が必要となる
  4. 単なる質問票のため、ADHDの確定診断でないことは注意(正確な診断は医師によるものを本来は優先すべき)
  5. この質問は都市部の小学校にのみ限定(他地区では様相が変わると想定)
  6. 横断的な主観によるアンケート調査のため、因果関係を立証したものではなく、あくまで参考程度

などなど多数ある事はありますが、この問題を根源を考えるにあたってはこの論文結果は十分かと思います

この論文からの学びとしては、

  1. 親と先生とで、ADHDの評価ポイントが異なる可能性➡双方の目線合わせが重要
  2. 小学校1年生のADHD検出は多いが、学年が上がるにつれ検出が下がる➡就学初期は先生とのコミュニケーションは密だが、学年が上がると意識が下がる?
  3. 親側の各種メディアや有識者の情報に触れているほどADHDの検出感度は高かった➡親の認知を上げることが重要
  4. 保護者や小児科(精神科医)の包括的なADHDの啓発トレーニングが必要となってくる
  5. トレーニングは、特に父親や親が教育の機会が少なかったケースや小学校の学年2年以降への気づきを促す点が重要となるか?

などがあるかと思います。

これは日本における問題にも通じそうです。ADHDは最近になって昔に比べて認知度が高まってきておりいい傾向ではあるのですが、子供を観察する目として重要なはずの親と先生の認識の乖離がコミュニケーション阻害を生む可能性があります。双方の考えを一致させやすい可視化できるツールがあれば便利なのかもしれません。

意外に、ADHD傾向があると察知した場合は、日本版の形式に合わせた上で、児童精神科医の監修を受け作成した質問票を親と先生の面談時に提示しあい、双方向のGAPを可視化することができれば、学校内と家庭内での子供のサポートの仕方も変わってくるかもしれませんね。

日本の場合はスクールカウンセラーが相談員として載ってくれることになるかと思います。ここまでの精査をせずとも、児童精神科医に相談するようにアドバイスを下さるケースもあるかとは思いますが、もし親御さんと学校の先生とで認識のズレが発生しそうなのであれば、このような可視化ツールを使うと効果的なのかもしれませんね。

また、メディアでも、単にADHDの啓発をするのではなく、もっと「見落とされがちなポイント」にフォーカスをするのも手かもしれません。意外とADHDだけではなく学習障害(LD:Learning Disability)がある可能性もあったりします。ADHDと併発することもあるため注意が必要になりますし、知能的に遅れがないだけに見過ごされやすいポイントでもあります。

子供は環境によって、親や先生に「言い出せない」「いう事すらわからない」「自身で認識できていない」というリスクもあります。

子供の生きづらさを回避する上でも、我々親も念頭に置いてサポートしてあげることが重要かもしれません。

それを感じさせてくれた論文でもありました。

監修:日戸由刈, 編集:安居院みどり, 編集:萬木はるか
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この記事を書いた人

海外での子育て事情や科学論文などから日本の育児に行かせる内容を情報共有していきます。自分の子が発達特性持ちなので、発達障害関連の話題も盛り込むかと思います。

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