世界共通語「ひきこもり」最新科学で状態の見える化へ!

日本において不登校となる子どもの数は年々増加しています。

不登校になる理由は様々であり、いじめが引き金となったり、元々の心身症の問題であったり、COVID-19の問題から生じたものであったり、単に面倒だから行きたくないと思ったり様々あります。

つい先日、文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果が公表され、不登校者が29万人超え、いじめ件数が68万件であるという結果でした。この話題についての総合的な理解と疑問についてはこちらの記事にまとめています。

あわせて読みたい

今回は、不登校にも密接に関係する「ひきこもり」についてのテーマについて述べたいと思っています。

目次

ひきこもりとは?

「ひきこもり」の定義として、 日本では、ひきこもりは「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」となっています。

さらに、2020年には九州大学やアメリカのオレゴン大学の専門家が、引きこもりを
「自宅において著しく社会的に孤立している」
「社会的孤立が少なくとも6カ月以上の期間で継続している」
「社会的孤立について著しい苦痛または機能障害を経験している」
という3つの要件を全て満たすことだと定義していますが、それに加えて、
週4日以上の頻度で外出する人は引きこもりとして認められず、「時々家を出る(週2~3日以下の外出)」「ほとんど家を出ない(週1日以下の外出)」「めったに家を出ない(1つの部屋からほとんど出ない)」といった3段階によって「軽度」「中度」「重度」という「引きこもりの重篤度」を定めるということを述べています。

2020年以降の提言されているひきこもりの定義

※自宅において著しく社会的に孤立している

※社会的孤立が少なくとも6カ月以上の期間で継続している

※社会的孤立について著しい苦痛または機能障害を経験している」という3つの要件を全て満たす

※「時々家を出る(週2~3日以下の外出)」「ほとんど家を出ない(週1日以下の外出)」「めったに家を出ない(1つの部屋からほとんど出ない)」といった3段階によって「軽度」「中度」「重度」という「引きこもりの重篤度」を定める

このような定義が明確となったことから、日本だけの問題ではなく、世界的な問題であるというように認識が深まってきつつあります。

「ひきこもり」は子どもだけではなく、高齢者においても社会問題として認知されています。そして、それは日本だけではなく世界においても問題が顕在化しているというのが現状です。

ひきこもりの疫学

厚生労働省の資料「社会・援護局・地域福祉課」のデータによると、令和4年度における、こども・若者に対する調査結果として、有効回答数8555件のうち、144人(2.05%)が当てはまるという結果でした。

【引用】厚生労働省ホームページ ひきこもり支援施策について (mhlw.go.jp)

ただし、回答者は15歳以上となっており、正確な子どもの把握が困難な状況でもあります。さらにこれは氷山の一角であり、子どもの場合は「引きこもり」と「不登校」が重複しているケースもあると考えられます。引きこもりに対する具体的な統計データは15歳以上を対象としているということもあります。

子どもがひきこもりになる原因とは?

※かなり多くの要因があるため、一概には言えませんが、下記のようなものが問題となっています。
※親の否定的な態度・言動(親からの否定的な発言や厳しいしつけ)
※対人関係のストレス:友人関係のストレスや人間関係のトラブル
※成績の低下など一種の挫折経験
※不登校からの延長
※ゲーム・ネットへの依存
※原因・理由不明

※心身症など

あくまでも原因となりうるものを羅列しておりますが、子どもが引きこもりになる原因は個々の事情や環境によるものが大きいとされています。また親が影響してしまっている状況(否定的な発言やしつけなど)でもあるとされています。

これらの引きこもりのための対策としては、専門的な支援やカウンセリングが必要となりますが、子どもの場合ではカウンセリングは「親次第」ということにもなっており、親が原因となってしまっている場合はカウンセリングを受ける機会や幅が狭まってしまう問題点もあります。

子どもの場合は養育者の影響がかなり大きい点でもありますので、親は子どもにとっての味方であってもらいたい、子どものSOSに耳を傾けられるような環境構築をしていただきたいものだと思います。

最新科学でひきこもりの状況を確認できるのか?

引きこもりかの判断は、先程の定義に当てはまるケースであれば、だいたい認識はしやすいかと思います。問題は、その手前の予兆を把握することができるのか?についてです。

それに関して興味深い報告がありましたのでシェアしたいと思います。

【英題】Blood metabolic signatures of hikikomori, pathological social withdrawal
【邦題】ひきこもり、病的ひきこもりの血液代謝シグネチャー
【雑誌】Dialogues Clin Neurosci. 2022 Jun 1;23(1):14-28.
【施設】九州大学大学院医学研究院臨床化学分析医学分野:瀬戸山大樹

ひきこもりの重症型が日本で認知され、2020年以降の新定義で世界的に広がりました。

この「ひきこもり:Hikikomori」は世界的な健康問題として認知されるようになってきています。

しかしながら、医学的な検知での「ひきこもりの病態」は未だ明確になっておらず、その生物学的特徴も未解明であるという問題点がありました

【何について調べている?】

薬による治療を受けていないひきこもり患者(n=42)と健常対照者(n=41)を比較。
ひきこもりの重症度とうつ病の心理学的評価と血液生化学検査と血漿メタボローム解析を行い、重症度の予測や症例の層別化が可能かを調査している。

【何がわかったか?】

ひきこもりの重症度の予測の一環で男性において血液成分のビリルビンが低く、アルギニンが低く、アシルカルニチンやオルニチンが高く、血清アルギナーゼの活性が弱い事が明らかになった。
さらに、血清尿酸および血漿コレステロールエステルが症例の層別化に寄与していた。
今後の研究でリハビリテーションの治療経過の補助診断となり得る家の検証が必要になる

今後にどう活かす?】

非常に興味深い研究結果となっています。検討患者数は少ないため今後の研究に来たいですが、血液検査で、ひきこもりかどうか?の予備判断ができるかもしれないということです。

また、カウンセリングや薬物治療の際に、これらの指標が改善することで、ひきこもりからの脱却に相関するかどうかのデータが出てくればさらに信憑性が増しそうです。

今回の結果で変動した因子に関しては、

※ビリルビン:もともとうつ病の患者では血中ビリルビン濃度が低く、様々な精神病でもこのビリルビンの代謝物が高いという報告が得られています。さらにビリルビン濃度が低いと、恒常性を保つためのサーカディアンリズム(概日リズム)の乱れを生じやすいと言われており、ひきこもり患者の生活スタイルにも合う(6ヶ月間家にいる)ことからも、ひきこもりが身体的影響を引き起こしている背景を示していそうです。
※アシルカルニチン:ミトコンドリアのエネルギー代謝上必要と言われている物質で、体の各所にエネルギー供給を行う上で重要となります。特に脳へのエネルギー供給で重要視されています。過去の報告で、鬱病患者がSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を飲むとアシルカルニチンが現象することが知られていることや、気分障害の患者の血中アシルカルニチンが高いという報告があることから、脳機能の低下を反映している可能性があるということも考えられそうです

※アルギニン/オルニチン:今回男性では血清アルギニンが低く、血清オルニチンが高いという結果でしたが、これを媒介する血清アルギナーゼという酵素の活性が高いとうつ病の重症度に関わるという報告は過去にも出ていたようです。このアルギナーゼの活性が高い状態のためアルギニンが代謝され減少し、オルニチンが増えている可能性が示唆されています。そのため、アルギニン補充のサプリで男性ひきこもり患者の症状改善になるのではないかとも考察されています。

今回の検証では運動面の評価や身体活動レベルがまだ反映されていないということだったので、その点がわかってくるとより層別化もできる可能性がありそうです。今回の結果がなぜ男性側だけで顕著であり、女性側出はな確認されなかったのか?という点も気になるポイントですね。

またこれが年齢別、人種別でも再現性が取れるような結果になっていれば非常に興味深い内容になると思います。

まずはひきこもりの方への支援としては、ハードルが高いかもしれませんが、運動や身体活動レベルを向上させるところから始めて、なおかつ男性ならばアルギニン補充サプリを服用していくところから支持療法を考えて言っても良いかもしれませんね。さらなる深掘りの研究を期待したいところです。

岩波書店
¥792 (2023/10/11 06:10時点 | Amazon調べ)
子どものこころ専門医と考える能動的な子育てオンラインサロン
Dr.えりのyoutube動画はこちら
LINE登録はこちら

にほんブログ村

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

海外での子育て事情や科学論文などから日本の育児に行かせる内容を情報共有していきます。自分の子が発達特性持ちなので、発達障害関連の話題も盛り込むかと思います。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次