文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果によると、2022年度で不登校の小中学生は過去最高記録を更新して約29万9千人。(2021年統計に比べて22.1%増加)という結果になっています。
定義としては、小中学校で30日以上欠席したケースをカウントしています。
2021年度統計では24万人超え!となっていたので、それを5万人近く上回ると行った形になっています。
過去10年にわたり右肩上がりの増加を示している不登校・・・。
今回の統計は見えていない所が結構多いので、こういう点を明るみにすれば更に問題点を解決する緒になるのではないかという視点でまとめています。
不登校原因が不透明なところがある
不登校の数が増えているという事はわかるのですが、ただ今回のデータだけではわからないところがあります。30日以上欠席したケースで、どれだけの割合の生徒が「長期欠席」であったのか?です。
COVID-19の影響もあり、その後遺症や精神的な問題により長期欠席になったケースもあるかと思います。その内訳を見なければ、本当の不登校の原因特定が見出しにくくなります。ぜひ開示してもらいたいものですね。
一番あってはならないのが、「不登校と認定しないために病欠扱い」にしているとか・・・?
受験が絡んでくると出席率も大きな影響を持ちます。不登校となると問題視されますので、ひょっとすると何かしらの配慮で「病欠扱い」担っている可能性もあるのかも?そうなると正確な実態把握が困難になるので、こういう統計を出す際に大きく頭を悩ませる要因になります。
また、学校内外で専門機関に相談していない事例の不登校は11万4千人近くとなっています。といっても、これもまだ氷山の一角のような気もします。不登校予備軍も含めることになれば飛躍的に数が伸びてしまうのではないでしょうか?
さすがに予備軍をどう定義して加えるのか?というのは難しいところなので統計上の限界点にはなりそうですが、水面下で悩んでいるお子さんはまだまだ数多くいるという認識で望む必要がありそうです。
不登校の小学生は10万5112人で全小学生の1.7%、中学生は19万3936人で全中学生の6,0%となっています。
やはり思春期に差し掛かるに連れて増加傾向であると言う結果になっています。
さらに、不登校の小中学生のうち、38.2%(11万4217人)は学校内外で専門家の相談・支援を受けていなかったとの事です。
義務教育ではないですが、高校では対前年1万人増の6万575人であったとのことです。
我々親側のリテラシーはどうなのか?
令和時代となり、多様性がより許容されている社会になってきました。
「不登校」だったということを明かす著名人も増え、不登校も一つの個性である!辛かったらいかなくても良い!
などという声が色々なところで起こり、不登校を容認するような時代背景になっているのも一つの要因かもしれません。
また、マンパワー不足で生徒一人ひとりに向き合いにくくなってきている状況で、先生の信任性が落ちてしまい、問題が起こった際には、親側の判断で不登校にしたりするケースもあると言われています。
国も少子化対策の一環で、生徒をエリート化しようという動きが見えてきています。また今までの大卒の親御さんも、今後勝ち抜いていくためには子どももエリートなる必要があるという方も一定数おられます。
しかし、これから先の未来は、通常の学業ルートでは到達できない道もある。親としては、子どもを受け身の不登校にするのではなく、不登校になっても別の道を親子で模索すべきなのかもしれません。
不登校というレッテルはこれから先、あまり意味を持ちません。
なので、この時期に子どもは一体何をするのか?を考えていく必要があるのかもしれませんね。
ただし、安易に不登校を勧めるのも子供のためにはならないとも言えます。
「子どもが辛いといっているから・・・」
「(親の判断で)子どもが嫌だと言っているから行かなくても良い」
「学校なんて行かなくてもなんとかなる」
だけで判断するのは、子どもの将来を狭めることにもなります。
たしかに学校に行かなくても切り拓かれる未来はありますが、集団生活の苦楽を経ることによって得られる成長もあります。
長期間の慢性的な不登校を選ぶよりも、適切な休養を入れつつも、集団での訓練を積み重ねることで、子どもの見える風景も変わってくることもあります。その子どもの「真の心の声」に耳を傾けて、不登校になっている原因と向き合い、親子で善後策を考えていくことが、これからの社会での大きな成長ポイントにもなろうかと思います。
いじめについての統計も開示
上述している不登校の大きな要因の一つ、「いじめ」についての統計も今回公表されています。
最新の2022年度の統計では68万2千件に登っています。いじめ認定件数は2021年統計では61万5千件でしたので、更に増加しているといった背景になっています。下記の図は2021年までの統計ですが右肩上がりで上昇しています。
小中学校などで認知されたいじめは10.8%(6万6597件)となっていますが、あくまでも認知されているレベルなので実際はもっと上振れているかとも考えられます。各県や各学校によって「いじめの認知」の度合いが異なっているというところも大きいからかもしれません。
「いじめ」と定義されている中には様々なものがあります。
✅生徒間での直接的なトラブル
✅学校の先生と合う合わない
✅非直接的ないじめ(SNSなど)
✅他者と違う面を指摘され、本人がいじめと自覚
これらの諸問題から不登校に発展するケースもあります。
今回の報告ではこの「いじめ」における重大事案は923件ということでしたが、68万件もいじめがあって、923件くらいしか重大事案がない?というのはちょっと首を傾げます。いじめと認定されるということは、それだけに重大な事案であると想像がつきます。なのになぜ重大な事案は全体の0.1~0.2%程度に過ぎないのか?
昨今の報道を見ると、教師が実情を把握していないためか、重大な事案と判定しないという傾向も強いかと思います。
実際にSNSなどでのいじめや教師が引き金になってしまっている場合はさらに認定が難しいでしょう・・・。
現状では、いじめが理由であったとしても、その件が重大事案と認定されないまま、生徒は不登校を選んでしまった・・・。
という小中学生も多いのではないかと考えつきます。
認定の仕方に地域間格差はあるのかないのか?も気になるポイントです。各県単位でのいじめ認定と重大事案判定の割合を見てみたいものですね。(ただし開示の仕方によってはあの県は荒れている!とかの誹謗中傷にも繋がる可能性がありますのでむずかしいかもしれませんが・・・)
また、いじめ判定も程度感が様々であることを留意しなければなりません。
「仲間はずれにされている気がする」
「友達と喧嘩して以来、グループから外された気がする」
「先生から注意された、嘘をついてまわりから変な目で見られた」
などのような理由でも、子どもにとっては大きな悩みに発展します。
些細なことかもしれませんが、これを放置したままだと、子どもたちの不登校に繋がります。
本当にいじめなの重大事案でないのならば、親も安易な不登校を勧めるべきではありません。
一方でこの数字が本当なのであれば、それは少なすぎるという話にもなるし・・・。
統計上の数字だけ鵜呑みにするのは危険かもしれません。
この統計だけでは表現されていない諸問題も加味して考えなければならないのは確実なようです。
昭和時代と異なる令和時代の不登校
不登校は昭和時代でも大きな問題として取り扱われてはいました。
しかしながら、昭和と令和では背景が異なっているように思えます。
昭和時代の背景で考えられるものを列挙してみますが、
※ストレートな喧嘩が多かった
※教師の存在が一目置かれており、教師介入に一定の効果があった
※不登校を容認しない周囲の環境
※辛さを抱えながらも投稿だけはしていた子どもも多い
※教師による家庭訪問などのフォローアップもあった
※学校に行けないと将来の選択肢がないという親子の認識が強かった
※非行に走っても学校に行っている子は一定数いた
など色々と挙げられるかと思います。
一方で令和時代を考えてみますと、
※SNSなどによる間接的な人間関係悪化が目立ってきた
※ゲームやネットなど充実した環境が自宅でも整っている
※COVID-19を経て、学校に行かない期間が長く続いた
※教師のマンパワー不足により一人の子に割ける時間が少なくなった
※様々な監視の目で教師の介入に制限がかかるようになった
※多様性容認の観点から親も子に不登校を推奨しやすいような背景
※学校に行かなくても道はあるという事のみ先行している状況
※不登校者が増える一方、支援が追いついていない
などが考えつきます(他にもあるかもしれませんが・・・)
ただ昭和時代は、無理やり登校させていたので、社会に出てから苦労をするケースも多かったでしょうし、心身的な問題で学校にいけないことは怠惰だと思われる事例もあり、子どもにとっては窮屈であったとも言えます。
一方で令和時代は、不登校に対する垣根が下がってきたせいか、子どもの状況に応じて不登校を勧めやすくなってきた背景があります。一方でその線引きがゆるくなってきている点と、実際の支援が追いついていないという状況です。
まとめ
以上のように、不登校件数とその要因の一つである「いじめ問題」の件数が増えているのは事実ですが、我々親側はその背景を考えていく必要がありそうです。そして、専門家や専門医が協力をして子どもを支援をする体制を構築しなければならないでしょう。
たしかに「多様性」が容認されてきたことは素晴らしいことかと思います。しかし「多様性」という名のもとに、本来子どもたちにとって、「広がるチャンス」と「失うチャンス」もありそうです。その子が本来掴むべきチャンスを潰してしまっては元も子もありません。ご家庭ごとの子供の特性や環境に応じた、議論と対策はしっかりと考えていく必要がありそうです。
学校は本来、学業のみならず社会的コミュニケーションを学ぶ場でもあります。そこから離れるということは、子どもの自立のトレーニング場から離れるということになってしまい、「今後の社会での自立をどう鍛えていくのか?」というジレンマにも行き当たります。すごく難しい問題です。
ここでは詳しく論じませんが、学校、家庭環境の中で、子どもの気質や発達や心身的な状況を鑑み、不登校を勧めるかどうかを判断する線引きが重要になってきそうです。「何でもかんでも容認することのリスク」も我々親側は認識しておく必要もありそうです。
不登校に入る前に、親として寄り添い、子どもの悩みを聞くことだけでも事前予防になったりしますし、発達の動向を確認しておくだけでも善後策も考えられます。いきなり極端に「不登校」という道を進まなくても良い事例もあるかもしれませんので、子どもとの対話を重要視していきたいですね。
今回の厚労省のデータはそれを考えさせてくれる良いきっかけを与えてくれました。
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