思春期には誰しも通る「反抗期」。私も少なからずこの時期を親に体験させてしまったと自覚しています。
とにかくイライラして、そのイライラをぶつける場所がなくて、結局一番近くにいて、味方のはずの家族にぶちまけてしまう。
親も子も、双方ともに心に余裕がなくなり、この時期は本当にお互いが辛い気持ちになるでしょう。
ですが、ここからの学びも見えてきつつあります。今回はそれを海外事例を踏まえ紹介しています。
「子育てに画一的なアプローチはない。専門家が教える、子どもの反抗的な態度に対処するためのヒント」
この記事は、インディアン・エクスプレス紙というインドにおけるニュースソースから引用しています。昨年の3月に、日本の岸田総理大臣がこの新聞紙にも国交樹立70周年を記念する寄稿載せている新聞紙でもあります。概要はこちら。
子育てに答えはなく画一的なアプローチはない。
だからこそ個々のアプローチが必要であることを教えてくれている記事です。
この記事はインドで子供たちの教育の第一線に関わる著名人の方々が、この多感な時期をどう対応するべきか?という内容についてインタビュー形式で取りまとめられている内容となっています。日本としてもかなり参考になりそうなものもありますので、これを機に勉強させてもらえればという思いで取りまとめています。
英才教育のオーキッズ・インターナショナル・スクール校長アヌラーダ・プレムナート氏
インドにあるオーキッズ・インターナショナル・スクールは母国語だけでなく、当然英語も主体としており、その他フランス語や多国語言語も学べるカリキュラムをとっており、オックスフォードやケンブリッジなどへの体験留学もあり、成績優秀者はそのまま大学に無料で入ることができる程の超一流の進学校。その校長先生が述べているものとしては・・
「長年にわたって娘と自分との間の関係が崩れていくのを目の当たりにしてきました。娘がハンガーストライキをし、部屋に閉じこもり、何日も私と口をきかないこともありました。時には、大声で叫びながらヒステリックに振る舞うこともありました」
「娘の行動で私自身、母親として失敗したと感じ、罪悪感と羞恥心に繋がった」
https://indianexpress.com/article/parenting/blog/children-rebellious-behaviour-bullying-peer-pressure-tips-for-parents-8424146/
母親であり、このような超有名な進学校の好調でさえも、子供の多感な時期はかなり苦労されていた・・。という気持ちを吐露されています。プレムナート氏は、この状況を打開するためにYouTubeの動画や本を読んだり、Googleの助けを借りたりして、家庭での子供の反抗的な行動を克服するためにあらゆる手を尽くしたそうです・・。が、どれもよい結果が得られなかったと述べています。
そこで、行動カウンセラーを頼り、子供とカウンセラーと対話する機会を親抜きで作った結果、子供も親の視点を理解し、事態は良い方向へ変化し始めたとのことです。親ではなく第三者が客観的に聴き取りをして、子供の認知を促すようなアプローチが秘訣であったと述べています。
日本では「認知行動療法」という精神療法(心理療法)の一種であり、認知に働きかけて気持ちを楽にするアプローチです。
この行動カウンセラーが具体的に使ったかどうかは読み取れませんが、それに似たアプローチではなかったのではないかと推測できます。ストレスを感じると子供たちは悲観的に物事をとらえやすくなりますが、認知療法は、子供の聞き取りを行い、子供の中での考え方のバランスを取ってストレスに対応するこころの状態を作り上げていくところにゴールがあります。
バチバチ火花を散らして言い合う間柄の親や身近な人ではなく、認知行動療法に長けたカウンセラーとの対話が重要な事例かもしれません。少なくとも、youtubeやGoogleは答えを持っていない領域ですね(画一化された答えのない個々との対話が重要)
次のエピソードもそれに近いものがありますので紹介します。
ファッションデザイナーのレイチェル・J・アミルタラジ氏の場合
ファッションデザイナーとして第一線で活躍しているレイチェル・J・アミルタラジ氏の子育ても凄まじかったようです。子供が彼女の視点で物事を理解するのには相当高い壁があったようです。母としてのアプローチに対して、子供側は、親を見下すような態度や言動で反応してくるので、母親としても心から疲弊されていたようです。
「3児の母として辛かったのは、子どもたちが親が決められたルールに反抗し、無礼な態度を取ったり、怒鳴ったり、部屋を片付けなかったりするのを見せつけられてきた事です」
https://indianexpress.com/article/parenting/blog/children-rebellious-behaviour-bullying-peer-pressure-tips-for-parents-8424146/
と述べられています。そして、彼女が素晴らしいところは、この一連の子供の対応を「反抗期」として捉えるのではなく、子供たちの行動を「自己主張と個性を確立させるための一連の段階」と捉えて対応してきたとのことです。
この達観したものの見方とそれに対する子供の認知を理解してあげていたわすることがいかに大事かを思い知らされます。
インドの子育てコーチから見る「反抗期」
ただ一般的には、親も子も、お互いの考えや視点やポリシーなどがぶつかり合ってしまう者‥。そうならないための方法として、インドの子育てコーチでもあるSwati Mahajan(スワチ・マハジャン)氏は下記のように提案しています。
この時期の子供を「反抗期」と呼ぶのは控えた方がいい。なぜなら、それは子供が経験する段階であって、一定の性質があるわけではない。「子どもは自分のアイデンティティを探求しているときに、自分自身の自立やコントロールを欲する。そのせめぎ合いの真っ最中であるため、反抗的に見える事もあるのだろう
https://indianexpress.com/article/parenting/blog/children-rebellious-behaviour-bullying-peer-pressure-tips-for-parents-8424146/
と述べています。確かに誰も通る道。子供自身もすさまじい葛藤の中でこの時期を生きているといっても過言ではないでしょう。
しかし、マハジャン氏はさらにこうも続けています。
親や保護者としては、この反抗期が後に意地悪な性格にならないよう、この段階を乗り越える手助けをする責任が生じる
https://indianexpress.com/article/parenting/blog/children-rebellious-behaviour-bullying-peer-pressure-tips-for-parents-8424146/
このコメントにはインドの他の心理学者も共感の意を示しており、子供、特に10代は「反抗期」はいわゆる「神話」のようなものであり、子供は言葉で伝えられない事を伝えたいので反抗しているだけだと付け加えています。
この一連の子供の心の機微を「神話」と例えているのがインドらしいというか、日本の認知を超越した発想ですね。確かにこのタイミングで、子供は「神の時間」を過ごしているわけなので、人智が及ぶわけはありません。逆にこの葛藤の中で子供は戦っているので、親としては応援したくもなります。
さらに、この記事では、米国で最も影響力のあった精神分析家であるErik Homburger Erikson(エリク・ホーンブルガー・エリクソン)氏の「Theory of Psychosocial Development(心理社会的発達理論)」を引用しています。
子供の発達段階は年齢に応じて様々な葛藤を生じさせるという部分を引用していますね。つまり、
幼児期(2~3歳)では「自律 vs 疑い」 思春期では「アイデンティティ vs 役割の混乱」と述べています。
この時期は特に葛藤が強く、自己同一性や性格や好き嫌いを確立させようとするタイミングでもあるからより強烈な反動が生まれやすいのかもしれません。
具体的な歩み寄りの方法とは?
インドの社会は、どちらかというと、親が強い存在として存在していた家長性の時代、昭和以前の体系色が残っているともいわれています。つまり、親に逆らうという事は「反抗」とみなされやすいというイメージが付きがちのようです。
ですが、それは間違いで、子供が健全な成人になるためには「自分自身のアイデンティティを探求することが重要」と述べています。つまりはインドでも家庭内での親のマインドチェンジを図っていく必要性を説いています。
子どもは成長するにつれ、感情的、知的、身体的にさまざまな変化を経験し、衝動的に行動するようになっている。
なので、親としてこの「反抗期として呼ばれている時期と原因を知り、対立や終わりのない不毛な戦いを防ぐことが重要」と述べています。
マハジャン氏が考える、反抗期の原因を理解する方法としては、
「子どもは、別々の考えや感情を持つもう一人の自分自身の存在。親がこの世に生んだからと言って、子供に個性がないはずがない。なので、子供たちの要求とニーズのバランスをとることが大切。そのためには、親が子供の心配を認めてあげることが必要。ある行動に対して子どもを責めるのではなく、なぜ怒っているのかを理解し、どうしたらいいのかを聞く必要がある」
https://indianexpress.com/article/parenting/blog/children-rebellious-behaviour-bullying-peer-pressure-tips-for-parents-8424146/
であると語っています。
さらに、子どもの関心事に親も関わることが大事であり、共通の話題を見つけ、より良い関係を築くことが重要と提案しています。
具体例があがっていましたが、この場合のインドの子供がNARUTOが大好きなので、一緒に見て楽しむ時間を作るようにしているとの事。(日本のアニメはインドの「神話」(反抗期)の時期の子供の心も惹きつけるからスゴイ・・)
このように、子供側の目線に立ち、共有できる部分で親子とがお互い歩み寄ることで、この時期の子供との強い絆を築く事が第一歩であると述べています。
距離を狭めて、相手の警戒感を緩めるというのが本当に良いアプローチの仕方だなぁと思います。
親の無用な焦りが逆効果を招く必要がありますので、まさしくこの考え方は真理ですね。
ただやはり難しいのは、子の思春期の時期の親のアプローチの「程度」です。
親側が悩むのは、子供を叱りすぎたり、全く叱らなかったり。どちらに触れても問題であるからです。叱りすぎてしまうと親はコントロールできない葛藤を抱えてしまい規制を作ったり子供をがんじがらめにしてしまう・・。一方で放任にし過ぎると子供は自分のコントロールを逆に失ってしまう事にもなる。
さらに服従を強いると、問題解決能力やリーダーシップの育成を怠ってしまう事に繋がる可能性があり、自由を与えすぎると暴走し、外の世界での行動に障害が出る問題も指摘しています。
この程度感は子供の背景による所が大きいため、そのため、youtubeやgooglなどの情報を鵜吞みにしていても通用しないという事にもなりそうです。やはり子供の事よを苦わかっている親が、子供のバックボーンを理解し、適度な距離感を保ちつつこの「神話」の時期に子供を支えてあげることが重要なようです。
今回のまとめ
この記事の締めくくりとして、今後、反抗期=神話の時期に入る子供たちへのアプローチとして下記に7つまとめています。
①親は子供の求めに同調し、支え、暖かく接することを心がける。
②暴れる子供に対する注意や監督などの割合を子供の背景に応じて慎重に考える。全く注意しないというわけでは無く程度を考える
③子供の考えや感情を検証し、子供の自立心を高める上で重要な時間なのだと親側も忍耐強く自覚する事
④反抗期と呼ばない!この時期の子供たちは「神話」を生きているのだ!(インド風)
⑤反抗の原因を探る問いかけ(反抗のトリガーはいじめや自尊心の低さ、友達の影響や商人欲求など様々)を心がける。親だけで対応が困難な場合はカウンセラー(日本では認知行動療法に長けた児童精神科など)の力を借りる
⑥子供との対話を欠かさない。今日一日の過ごし方の変化を確認。良い事も悪い事も何でも共有できる場作りが重要
⑦この子供の多感な時期を親としての学びの場であるという事を認識するとともに、他者の勧めることを妄信するのではなく自分の直観に耳を傾けることが重要(親としての直観を大事にする)
いかがでしたでしょうか?
個人的には、子供のこの多感な時期を「反抗期」と呼ぶのではなく、内面と向き合う「神話の刻」と例えているところにヒトとしての神秘を感じさせられます。子供にとっての子の重要な時期は、親側のマインドが極めて大事なのだという事を学べます。
子育ての悩みは万国共通。だからこそ、各国のオリジナリティのある方法を日本を学び取っていく事が重要なのかもしれません。
認知行動療法の一端について、私が過去、だべっていた動画がありましたので貼っておきます。この記事にもyoutubeを頼りにするな!というインドの記事を引用しておきながらアレですが、コーヒーでも飲みながら「ふ~~~~ん」感覚で見てもらえれば幸いです。
コメント