自殺行動は世界的に問題となっている要因です。
世界保健機関(WHO)によると、毎年約80万人が自殺により命を絶っているといわれています。これは、例えるならば毎40秒に1人の割合で自殺が起こっていることを意味します。そして若年者の中では自殺は15~29歳の若者の死因の第二位であり、全ての年齢層を通じて死因の上位20位以内に入っています。
多くの自殺者は何らかの精神疾患を抱えています。特にうつ病や統合失調症、躁うつ病、不安障害などが挙げられます。しかし、これらの疾患は適切な治療を受ければ改善可能であり、自殺予防に大きな役割を果たすと言われています。
しかし、後手に回るケースも多いため、「どのような人で自殺に繋がるケースが多いのか?」そして「どのような人に介入を検討していくべきなのか?」という情報が枯渇している状況でした。
日本の自殺率についても比較的高いといわれています。
厚生労働省の統計によると、令和4年の自殺者数は21,881人(前年+874人)となり4.2%増加しています。
COVID-19の影響も大きかった可能性がありますが、男性は13年ぶりの増加で、女性は3年連続の増加となっています。
また、人口10万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」は全体で17.5となり、前年と比べて0.8ポイント増えてます。
この自殺は世界のみならず、日本もより一層真剣に考えていく問題であると言えます。
今日はその報告について深掘りしていきたいと思います。
【自殺に関連する遺伝子変異群が同定?】
自殺の理由は多様で複合的な原因や背景を持っています。その対策には社会全体の理解と協力が必要となるとともに、前述した、「どういう人々に自殺のリスクがあるのか?」ということを突き詰めていく必要もあるとされています。
今回紹介する論文は、自殺に関連する遺伝的な背景の同定を主目的にしている報告です。
今までに自殺は「何かしらの遺伝的要因」が絡んでいる可能性があるといわれていました。過去に2つの大規模な臨床試験が行われており、国際自殺遺伝学コンソーシアム(ISGC)コホートという全世界的なプログラムをベースにした研究結果がすでに公開されています。2つ大規模なデータはそれぞれ、一般人と退役軍人を対象にしています。
【タイトル】GWAS Meta-Analysis of Suicide Attempt: Identification of 12 Genome-Wide Significant Loci and Implication of Genetic Risks for Specific Health Factors
【雑誌】Am J Psychiatry. 2023 Oct 1;180(10):723-738【Inpact Factor:19.242】※横浜市立大学の精神科も入っています。
【何について調べているか?】
自殺行動には遺伝性があるということがわかっており、世界的に問題となっている死因。今までに行われた2つの大規模な遺伝学的コホート研究の統合解析を行い、人種ごとの遺伝子におけるリスク解析を行った
【何がわかったか?】
うつとPTSDの療法で絞ったところ、自殺はADHDと喫煙と不安耐性との間で共有遺伝子変異が確認された。
特定の健康因子に対する遺伝的リスクの共有があった。
【日常でどう活かす?】
この試験で注意が必要なのは、半数以上が米国の退役軍人のデータを使っているところです。そのため戦地での経験などから背景的に精神疾患を持ちやすく希死念慮に繋がりやすい背景があることに注意が必要です。
ただこのような大規模なゲノムレベルで自殺との関連を見た報告は限られています。
今回わかったことは、遺伝子の制御や転写、ストレスに対する細胞応答、DNA修復、免疫関連など、日常的な健康における危険因子と共通していることが初めて示されたのは興味深いところではあります。
今回の報告では、ADHDで喫煙がリスクファクターであり、睡眠不足が重なると希死念慮が強まる可能性も示されています。
今後の再現性がさらに必要になりますが、人種差も考えられるのと、今回のように特殊な層を対象にしているということもあるので、日本での統計データが出てくると、将来の予防策において大きな手がかりになるのかもしれません。
限られた命、そして未来に続く命。
生きてさえいれば色々なチャンスは巡ってきます。
まだまだ研究は途上ではありますが、生活習慣を改めることで守られる命があるということを念頭に置いて、
我々、親側は、いのちの大事さを伝える子育てをしていかなければならないなと感じます。
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