ADHD傾向のインターネット依存が脳や体にもたらす影響を〇〇で確認できる時代が来るかも?
これだけインターネットが生活習慣になった今では、大人もそうですが、子どももインターネットに依存する日々を過ごしている人も多いでしょう。人生を豊かにしてくれるインターネット。一方でこのインターネットの弊害は小児期から青春期の子どもたちに生活面でも脳機能的にも大きな問題を生じさせることが問題視されています。
スマホの登場で、どこでも誰でもネットの世界で情報収集ができる。日々学校や塾などで忙しい子どもたちは、インターネットやオンラインゲームを夜にすることになり、その分睡眠時間が削られ、睡眠障害に至るという社会問題の様相も示しています。それに子どもたちは思春期世代で当たり前にスマホを持つような時代。持っていないことで仲間に入れなかったり、友達とコミュニケーションを取りづらいというような問題も生じてきました。
トルコでもこの社会問題が生じており、インターネット依存症の子どもたちも増えているとのこと。もはや世界規模の問題になっているなと痛感します。
更に別の報告では、ADHDのような神経発達症を持っている子はインターネットやゲーム依存になりやすいという傾向が示されています。
トルコのエルジエス大学の精神科がこの問題についての研究を進めており、今後次第ではありますが、興味深い疾患マーカーを見出したようです。
【原文】S100B and Neuron-Specific Enolase Levels as Brain Injury Biomarkers in Internet Addiction: Effect of Sleep
【和文】インターネット中毒における脳損傷バイオマーカーとしてのS100Bと神経特異的エノラーゼレベル:睡眠の影響
【雑誌】Pediatr Neurol. 2023 Aug 26:149:93-99.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37837757/
【著者】Esra Demirci :University of Erciyes, Kayseri(トルコ)
【インパクトファクター】2.52
【何について調べているか?】
インターネット依存症と睡眠障害との関係で、睡眠の質に関するバイオマーカー(指標因子)を調査
65名のインターネット依存症の青年(12~18歳)を対象。ADHDと不安症の考慮して2群に分けている。対照は健常者30名
【何がわかったか?】
血液中のS100B(S100カルシウム結合タンパクB)とニューロン特異的エノラーゼ濃度はADHDを有するインターネット依存症で健常者と比較して有意に高かった。
これらのバイオマーカーとインターネット依存症の重症度と関連性があった
インターネット依存症における睡眠の質および1日の睡眠時間の低下は脳障害を引き起こし、その結果、依存症の重症度が上がる可能性がある
【日常や今後にどう活かすか?】
インターネット依存症における睡眠障害に血液中のS100B(S100カルシウム結合タンパクB)とニューロン特異的エノラーゼ濃度が関わっているという報告です。
S100Bとは脳内の神経結合部位に発現するタンパク。くも膜下出血や脳卒中などの頭部の外傷で血液中に流出すると言われており、脳損傷の程度と相関。
ニューロン特異的エノラーゼは、神経細胞に存在する物質。神経特異性のある物質。これが血液中に流出することで脳への障害の目安となる。これらの物質がインターネット依存症で増加するというのはちょっとびっくりです。
脳にとって重要な物質が脳にとどまらず外部に流出してしまうというのは脳機能の維持にとっても大きなマイナスとなりそうです。ただ、ADHDによって引き起こされているのか?インターネット依存症による睡眠障害によるものなのか?単に睡眠障害だからなのか?がまだちょっと不透明。またこの関連性を明確にするためにはより大きな検証が必要になってきます。
今回見えたことは、インターネット依存症による睡眠障害は脳機能の維持においてダメージを与えている可能性があったということにはなりそうです。子どもたちも自分たちの趣味に投じる時間がすくないのはわかります。だって塾や宿題やその他諸々に追われる。一方で親からは早く寝ろと言われる。
じゃあ。。。ってことで、布団にくるまってスマホをいじったりゲームしたり。脳の可塑性が高い子どもとはいえ、結構大きなダメージを与えてしまいそうです。
今後、これらが指標になるのであれば、その程度で子供の健康状態を推し量るバロメーターに慣ればと思うのですが、それは今後の研究に期待・・・ということになりそうです。
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