非常に興味深い論文を見付けたので情報共有をしています。
近年、アメリカのニューヨークでもASDとADHDは著しく増加していると報告されています。
その背景には環境汚染も原因なのではないか?と色々と多角的に研究が進められてきていました。
各国においても、ここ最近、神経発達症(ADHD:注意欠如多動症、ASD:自閉スペクトラム症、LD:学習障害、その他さまざまな疾患)が増加傾向にあると述べられています。
色々な説が飛び交っていますが、
✅診断技術や基準の見直しにより診断される機会が増加した
✅メディアの影響などで親の認識が高まった
✅診断には届かないがグレーゾーンなどの生きづらさを抱えている人も多い
✅非専門医による診断の増加
など、枠組みや認識の広がりからではないかという意見もあります。
ただ、それ以前に、遺伝的な要因から、環境汚染による因子がどれくらい母体や子どもに影響を与えているのか?という研究も進められてきました。
今回PLoS ONEというオープンソースの科学論文に掲載された内容も、環境汚染物質とASD、ADHDの子どもとの関連性を見た報告となっています。
🔴プラスチック汚染はASDやADHDのリスクを高める?
【引用】Bisphenol-A and phthalate metabolism in children with neurodevelopmental disorders
【邦題】神経発達障害児におけるビスフェノールAとフタル酸エステルの代謝
【雑誌】PLoS One. 2023 Sep 13;18(9):e0289841
【著者施設】(ニュージャージー州、ローワン大学)
【何について調べているか?】
環境汚染物質とADHD、ASDの関連性について過去から問題視されている。この研究では、その中でも一般的なプラスチック添加物であるビスフェノールA(BPA)とフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)に着目して調査を行っている
【何がわかったか?】
BPAとDEHPの主な排泄経路はグルクロン酸化である。この代謝で不溶性物質をより水溶性にし、その後、尿として排出される。ASD(n=66)、ADHD(n=46)、健常対照(CTR、n=37)の3群の小児において、グルクロン酸分解の効率を測定した結果、3群の小児は互いに代謝的に異なっていた。
これらの代謝は対照群と比較してASDで11%(p=0.020)、ADHDで17%(p<0.001)低下していた。
DEHPも同様の傾向を示したが、有意ではなかった。
ASDとADHDは臨床的にも代謝的にも異なるが、BPAとDEHPの解毒効率の低下は共通しており、
BPAの低下は統計的に有意であった
【日常でどう考える?】
今回調査したBPAは、医療機器や歯科用シーラントや、CDの素材や、水筒、缶詰食品や飲料のコーティング剤として、日常的に使用されています。そして以前から癌を含むいくつかの健康問題に関連しているともいわれています。
今回のこの報告ではASDやADHDなどの神経発達症のこどもはこの有害物質であるBPAの代謝能力が落ちており、身体に濃縮されている可能性が示されています。過去の研究ではASDとBPAの暴露量の相関についての研究も公開されており、その点と類似している報告でもあります。
BPAは通常肝臓で代謝をされて尿中から排泄されますが、このBPA代謝は遺伝的にばらつきがある事が知られてます。遺伝的にBPAの代謝に問題のある人はBPAによる悪影響を受けやすいと言われており、ひょっとすると神経発達症の子たちの遺伝的要因と一致する可能性もあるという事です。
ここから先はさらなるデータ検証が必要になってきますが、先天的にBPA代謝機構の弱さと神経発達症の遺伝要因がクロスしているのであれば、BPAによるリスクを大きくしてしまう可能性もあるので注意が必要になってきそうです。このBPAに対する影響が先天的に母親が暴露されることで影響しているのか?それとも後天的なのかはまだわかっていません。
更に他の強い要因も考えられますので、これだけではまだ完全に物は言えませんが、環境要因による代謝の影響も考えられるのかもしれないという認識を、我々親側も持っておく必要はあるのかもしれませんね。
この他にも、神経発達症と各種生体内の代謝や他疾患への罹患などは特徴があるとも言われています。
その点も整理していければと思います。
まだまだわかってはいないことが多いですが、何かしらの筋道の参考材料になれば幸いです。
まずはこれ以上環境汚染を進めないためにも、できることから始めていかなければならないと改めて痛感させられます。
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