【徹底解説】ミトコンドリアがなぜASDや神経発達症予防に重要か?

ASDにおけるリスクファクターの童貞における研究は色々なところで進んでいます。遺伝要因・環境要因など様々な点でリサーチが進み、色々な見解が積み重ねられてきています。

今日はそのⅠつの可能性についての情報共有となります。

どちらかというと遺伝的側面の点になりますが、元々、ミトコンドリアの欠損はASDを含む精神疾患と神経発達症の療法に関係しているという報告がでてます。

しかし現時点では、ミトコンドリアの機能がヒトの脳の発達過程でどのように調節されているのか、またその調節不全がNDDにどのように寄与しているのかは不明でした。

ちょっと難解な言葉になりますが、脆弱Xメッセンジャーリボ核タンパク質1タンパク質(FMRP)というものが脳内に濃縮されていますが、この欠損が惰弱X症候群という遺伝性原因を作り出すと言われています。これは知的障がいの遺伝性原因としても知られており、男性では4,000人に1人、女性では6,000人に1人の割合で発症すると言われており、ASDの一つのリスクファクターとしても知られています。

マウス実験での話になりますが、FMRP欠損がミトコンドリアの融合を低下させ、マウスの神経細胞におけるミトコンドリアの断片化を引き起こしてしまう。そしてミトコンドリアの融合を促進することでマウスの行動障害が回復するという結果も出ているようです。

しかし、ヒトや他の動物での再現性はどうなのか?というところが課題となっていました。

ヒトにおける剖検例(亡くなった方の検体)で確認したところ、FMRPタンパク質のレベルは出生後に著しく増加し、成人期まで継続することが示されていたようです。

このFMRPタンパク質の欠損は、マウスでは大脳皮質の発達に関与。ヒトの細胞実験では神経細胞の産生が変化し、形態が変わり興奮性が亢進することも知られています。ただ、FMRPの欠損がヒトの出生前の脳の発達にどのような影響を及ぼすかは、まだ不明でした。

その後の研究で、ヒトの出生前発達におけるFMRP欠損がミトコンドリア機能の障がいとヒトの興奮性にも関わることを突き止めたようです。

このことから、これらに関わる遺伝子の多くはASDや神経発達症と関連しているということがわかってきました。その繋がりのある研究となっています

●ミトコンドリアの活性維持がASDのリスクを減らす可能性?
【原題】Species-specific FMRP regulation of RACK1 is critical for prenatal cortical development
【邦題】種特異的なFMRPによるRACK1の制御は出生前の大脳皮質発達に重要である
【雑誌】Neuron. 2023 Oct 3:S0896-6273(23)00702-X.
【著者】Minjie Shen:University of Wisconsin-Madison
【インパクトファクター】18.688

【何について調べているか?】
ヒトの出生前の脳の発達におけるFMRPの役割を明らかにし、治療の可能性としてミトコンドリア機能障害を標的とする価値を調べている。ヒトの献体の組織から検体を採取し、FMRP欠損とミトコンドリア障がいの関連性について評価している

【何がわかったか?】
FMRPが神経発達の出生前初期に発現が高くなる遺伝子(RACK1など)がヒトの出生前発達におけるミトコンドリア機能の維持に必須。

この遺伝子の欠損がASDを含む神経発達症の一因であることがわかった。神経細胞はミトコンドリアのエネルギー産生に依存しているため、ミトコンドリア機能の低下がこれらのリスクを高める可能性がある。したがって、ミトコンドリア機能を強化することで、出生前発達におけるFMRP欠損皮質ニューロンの障害が回復することから、ミトコンドリア機能障害を治療標的とする可能性がある

【今度どういう方向性に?】
まだ研究の途上でもあるのでこれからの展開に期待することになりますが、脆弱Xメッセンジャーリボ核タンパク質1タンパク質(FMRP)が先天的に欠損していたとしても、ミトコンドリアの機能が維持されている、もしくは活性化させることができれば、それを取り巻く脳の神経細胞のニューロンを回復することでASDや神経発達症のリスク軽減に寄与する可能性があるかもしれないとのことです。

ミトコンドリアは生体内のエネルギー産生恒常として知られており、身体的には体の機能維持や細胞の生成などに大きく寄与しています。脳においては、前述している通り、ニューロンの形成や神経細胞の成長に大きく関わっています。このミトコンドリアを維持・もしくは活性化させることが、神経発達症のリスク軽減に寄与するという臨床研究に結びつけば大きな福音となるかもしれません。

ミトコンドリアはこの他にも妊活においても重要とされています。

✅ミトコンドリアによって妊娠確率を向上させる可能性が報告
✅不妊の原因はその殆どが加齢に伴う卵子と精子の質の低下と言われている
✅ミトコンドリアは精子を作るためのエネルギー源の供給先
✅卵子内には数十万のミトコンドリアが存在しており、ミトコンドリアの質が卵子の質を決める
✅卵子の若返りとしてミトコンドリアの機能維持が重要となる

など、妊活と先天的な異常にもこのミトコンドリアが関わっているのだから驚きです。

現在はミトコンドリアサプリも市販されており、このサプリは色々な会社から販売されていますが、成分としては、

💡イースタティクミネラル:卵子と精子に直接関わる成分
💡ミネラルCB-1:加齢による卵子の質を高めるミネラル
💡L-カルニチン:エネルギー代謝をサポートする成分
💡ヘスペリジン:抗酸化作用があり血流改善や炎症抑制
💡総キサントフィル:抗酸化作用による細胞保持
💡L-グルタミン:免疫系の機能維持
💡L-シスチン:強力な抗酸化作用をもつ必須アミノ酸
💡ビタミンC:抗酸化作用、免疫保持
💡バイオベリン:体を温めむくみや冷え性を改善
💡シャタバリ:婦人科系疾患に使われるホルモンバランス維持の成分

上記の成分はミトコンドリアの活性化やエネルギー生成を助ける事で知られています。サプリではこれらの成分がまとまって含有されているということになります。(ただし一部違うものもあるのでラベルを確認しましょう)

通常のバランスのよい食事に加え、ミトコンドリアサプリ接種が望ましいのかもしれません。また上記の成分は妊娠中でも問題なく取れる成分で、サプリで補充するくらいの容量での副作用は考えられにくいとされています。

まだ完全に科学的に立証はされていませんが、ミトコンドリアが胎児の脳機能に関わっているという事実はあります。

バランスのよい食事に加えて、ミトコンドリアの機能を維持するサプリを併用することで日常的に神経発達症のリスクを軽減できるかもしれませんね。

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海外での子育て事情や科学論文などから日本の育児に行かせる内容を情報共有していきます。自分の子が発達特性持ちなので、発達障害関連の話題も盛り込むかと思います。

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