数多く存在するASD児に対するソーシャルスキルトレーニング方法。
療育の段階では応用行動科学に基づくABAなども有名です。
子どもが大きくなるに従って人とのコミュニケーションのトレーニングはより重要になってきます。しかしASD児は他者とのコミュニケーションを苦手としており、子どもによっては、複数人がいる環境に身を置きたくないということも多いかと思います。
そこで一つユニークな手法で、段階的に集団の中でのトレーニングをして行ける可能性について論じた論文がありましたので紹介したいと思います。
まさに我々が苦労したCOVID-19の環境で得た日常週間である「マスク利用」が有効であったりするのか・・・?と感じさせてくれるものとなっています。
【マスク】ASD児の集団行動を成功させるための導入方法とは?
●Increasing Face Mask Wearing in Autistic Individuals Using Behavior Analytic Interventions: A Systematic Review and Meta-analysis
【和訳】行動分析学的介入を用いた自閉症者のフェイスマスク着用の増加:系統的レビューとメタ分析
【雑誌】J Autism Dev Disord. 2023 Sep 26.
【何について調べているか?】
自閉症者のフェイスマスク着用を増加させるための行動分析的処置の有効性を評価することを目的
7つの研究の統合したメタ解析
【何がわかったか?】
参加者の平均年齢は8歳で、4~19歳の範囲となっていた。
すべての研究がマスク着用の肯定的な転帰を示していた。
(ASD児がマスク着用を容認、養育者や支援者もマスク着用を肯定、最初は嫌がっていても徐々に着用時間が伸びた、他者とのコミュニケーションも改善傾向など)
マスク着用をすることにより、集団環境下での逃避抑制(沢山の人々がいることでパニックになったり、避けたりするような気持ちが減る)という事にも関わる可能性があり、段階的な集団での社会訓練にマスク着用が一つの手立てになる可能性があるとされている。
【日常にどう活かすか?】
COVID-19の一貫でわかってきたことではありますが、ASD者にとっては学級閉鎖や集団活動の低下は気持ちのゆとりを得る機会であったとも考えられています。集団での活動に対してのストレスが軽減される点がポイントなのかもしれません。
マスク着用は他者から見える自分の一部を隠せることにも繋がり、
ASD児にとっても心理的安心感に繋がっているのかもしれません。
本来は、ASD者が医療器具をきちんと維持できるか?という観点で進められた研究ではありますが、意外な一面が見えてきたということになりますね。
ASD児が集団でのトレーニングを開始するに当たり、抵抗感を示す場合は段階的にマスクを着用するところから始めても良いのかもしれません。
マスク常時使用は奇しくもコロナを経たことからも日本で日常に定着をしていることもあり、周囲からの理解や使用の妥当性はあるかと思います。
まずは集団での活動を視野に入れる際には、ASD児の心理的安心感を得るためにマスク着用でのトレーニングを考えてみるのも良いのかもしれませんね。もちろん、子どもがそれを望むのかどうか?親子での話し合いが先かとは思いますが。
ご参考になりましたら幸いです。
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