【徹底解説】日本のゲーム障害の実際を「こころ」の観点で解説!

※子どもがゲームに没頭して、全く宿題をしようとしない。
※それどころか、学校にすら行きたくないと言い始めた!
※外で遊ぶどころか、フォートナイトやApexのオンラインゲーム上の友達と遊ぶだと?

ゲームを取り巻く環境で、親御さんとしても非常に悩ましい状況があったりするのではないでしょうか?

ゲームも一昔前とは違って、かなり精巧に作られリアルを追求しさらに多人数でチャットしながら遊べるという状況になってきました。(あぁ・・ドラクエでスライムを狩ってひたすら経験値を溜めていたあの時代が懐かしい)
※これってスライムか?

特に、昔は個人完結で進めていたゲーム、または直接対戦という事で友達がおうちにきて、その場に居合わせて一緒にゲームする時代であったのが、いまやオンラインを介して、顔も知らない、住んでいる所も不明、学校の友達とだって離れて遊ぶことができるような状況となっています。それも、パソコンではなく携帯ゲームでできるようになっているのだからすごい時代ですよね。

今回は、子どもにおけるゲーム利用がもたらす影響についてを考察しますが、その前にまず、直近の環境を見直してから各論に入っていきたいと思います。結構ボリューミーですが、胃もたれしませんように・・・。

目次

①コロナ禍でオンラインゲーム利用率と使用時間はどうなっていたか?

このオンラインを介したゲームはCOVID-19前後から子ども達の利用率が高まっています。もちろん、オンラインではなく個人で遊ぶゲームもありますが、特に依存度が高いといわれるオンラインゲームに関して絞って解説をしたいと思います。

総務省が委託して行った2022年度のオンラインゲームの利用実態における調査が公開されています。
(引用)三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査
なんともまぁ、10代でのオンラインゲーム利用率が高いという結果も出ています。

年齢別にみると、男性では10代から20代の比率が高いという状況にもなっています。
女性の比率もそれなりにあるというのがびっくりです。やはりこの時期はCOVID-19の関係で巣ごもり需要が高く、親側も子どもの対応が難しい事からゲームを容認していたという状況もマッチしていたのかもしれませんね。

オンラインゲームを利用している子達はほとんどがスマートフォンやゲーム専用機器による使用となっているようです。
中には最近、学校から貸し出された端末でゲームする・・・という事例もあるようです。時間帯によるネット接続を制限したり、フィルタリングなどで回避していることもありますが、一定数借りた端末でする子もいるようで、その子に対しては家庭内で指導をしてほしいというようにされているのが実態でもあります。だとしたら目を離していると・・・。という状況でしょうか。この調査では小学生は含まれていませんので、その実態は不明瞭ではありますが💦


ではオンラインゲームを使用している子達は、平日にどれくらいゲームをしていたのでしょうか?

✅10代では平日であっても2時間以上遊んでいるという状況
✅働き盛りの30~50代でも1~2時間はゲームしている
✅女性よりも男性が少ない傾向ではあるが、女性のゲーム時間も多い

おいおい・・・30代~50代では育児や仕事はどうした・・・という声が飛んできそうですが、この時期はコロナ禍で仕事が限定的であったことや巣ごもりで時間が余っていたという背景も加味されることもあるかもしれません。ただ、媒体がスマホや携帯ゲーム機であれば、場所を問わず休憩中や移動中だってできてしまいます。そういう背景も合いまっているのかもしれません。

まだ10代の子ども達においても平日は学校授業も限定的であったため遊ぶ時間もかなり伸びていたという事も考えられます。
(私の場合・・・平日2時間もあったら、ブログ書きたいよう・・・。)

この統計ではどういうオンラインゲームをしているかまでは調査はされてはいませんが、利用率は圧倒的に10代が多いという状況。これは男女ともに同じ傾向になっています。ただ、オンラインゲームは女性の方が比率は少なめにはなっていますね。
ただ確実に増えていることは確かです。(COVID-19という特殊環境下ではありますが)

男性が好むゲームと女性が好むゲームにも差はあるでしょうね。ただ最近はyoutubeなどでのゲームプレイ動画が出てきている所もあり、女児が憧れるインフルエンサーがゲームプレイをしているのに影響を受けて始めたりなどもあるようで、ゲームの種類の嗜好に関してもジェンダー間の違いが薄まってきているという考え方もあるようです。(私の憧れるあの人がやっているゲームをするとあの人に近づける気がするの・・・。という発想もあるのかもしれません)
実際にインフルエンサーマーケティングも水面下で行われていることもあり、消費者層として多い10代から20代のファンを抱えるインフルエンサーにゲーム実況動画やゲーム紹介をさせるという案件も多いと聞きます。そこが女性も興味を持ち始めている一側面かも?

下記のデータは過去一年以内にオンラインゲームで有料アイテムなどを購入したことがあると回答した520名を対象としたアンケートです。つまりガチでゲームをやっている層という解釈にはなるかと思います。

✅6割近くがオンラインゲームを毎日
✅平日に2時間以上プレイする比率は15~19歳と20代で多い
✅休日のプレイ時間は平日よりも長くなってしまっている
✅労働層である30代以降でも5割近くが2時間以上プレイしてしまっている

もう毎日プレイをするようになっていると、ライフワークの一環となってしまっていますね。さらに2時間以上を費やすわけですから・・・。こうなってくると、ゲームを主軸とした1日の時間設定を組まねばならない位ではないでしょうか?


単純に考えて、
週間単位:毎日2時間を1週間続けると14時間
月間単位:14時間を4週間続けることで56時間
年間単位:週間56時間を12ヵ月継続で672時間

うおお・・。ブログ書く時間が大体平均2~3時間なので200記事はできてしまう計算に(-_-;)

子どもにとっては、プレイしている時間が何よりもデトックスタイムになっていたりもしますし、日々のストレスから解放されたいという欲求もあるかもしれません。また友達とのコミュニケーションの仕方も多様になっていて、オンライン上で友達と遊ぶことで、何とか日々の辛さから逃避するための手段であるのかもしれません。

ただし、これを続け過ぎていくと、いつの間にか「手段が目的」となってしまい、

🙅キャラを強くするために時間が必要
🙅他者に負けないくらい進めなければならないので時間が必要
🙅強いアイテムが必要なので課金が必要
🙅スマホでできるからついついやっちゃう
🙅イヤな事があったらゲームする癖がついちゃった
🙅友達がするからついついやり続ける。仲間外れになりたくない

などに陥る危険性もあります。

子どもによって程度感はありますが、気軽にアクセスできるようになった点と、周りの影響という事が子ども達にとってオンラインゲームをする目的をすり替えてしまっているような気もします。(本当にこころから楽しいと思ってゲームをしているのか?)

「自制できる」
「あくまでも遊び」
「わりきってやってる」
「親と条件つけてやってる」
「やる事やってからゲームしてる」

というケースもあるかとは思いますが、中には下記の点で困っている事例も多いと考えられます。

✖昼夜逆転生活
✖日中に集中できない起きていられない
✖ゲームしないと落ち着かない
✖友達の輪から外されるか心配
✖イヤな事があったらついつい起動してしまう
✖ゲームの方が楽しい。日常が辛い
✖辞めたいと思ってももう今更止められない

特に現在問題となっているのは、3年間も続いたCOVID-19が明けて、日常に返り咲いた今。
あの環境で没頭してしまったオンラインゲームやコミュニケーション方法から脱却できずに困っているケースも増えています。

さらに、コロナ禍は我々のライフサイクルを大きく変えました。そのことで子ども達も環境対応に困るケースもあります。
この環境下で触れたオンラインゲームが、子どものこころのスキマに入り込み影響を与えている可能性もあります。

実際にスペインからの報告でも問題提起している論文もあります。

🔴コロナ禍の不安解消がコロナ明け後もオーバーラップしている可能性?

【原文】The role of life satisfaction in the association between problematic technology use and anxiety in children and adolescents during the COVID-19 pandemic
【和文】COVID-19パンデミック時の児童・青少年のゲーム利用と不安との関連における生活満足度の役割
【雑誌】Int J Ment Health Nurs. 2023 Feb;32(1):212-222.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36184843/
【著者】Raquel Luengo-González:スペイン
※スペインでCOVID-19が大流行した際に、ゲームが生活満足度にもたらした影響を調査
※コロナ後のネットやゲームやテレビ利用の過剰使用は子どもの不安と相関
※青少年においてより高いレベルの不安と関連していることが確認
※不安症状の有無は問題のあるテクノロジーの使用に大きく依存する

という結果になっており、コロナ禍の不安軽減のアプローチがコロナ後もその手段として定着しているという結果になっています。社会不安の代替として身近なゲームが選ばれている可能性がある事が示唆されてます。

そこで今一度考えなければならないのが、下記の子どもの不安がどのようにゲーム使用に結びついているかの点です。

勉強についていきにくくなった子
幼少期から仕方なくゲームをさせてしまった子
リアルでの子ども同士のコミュニケーションが苦手
元々の特性(神経発達症やグレーゾーンやHSCなど)が色々と色濃くでてしまって調整が難しくなった

自身のリアルに対する不安の代替としてゲームを選択すると、その没入感から色々な弊害を産み出してしまいます。

優先順位がつけられない。
やめたいのにやめられない。
ゲームに触れていないと落ち着かない。
ストレスが溜まると衝動的になってしまう・・・。

などなどで困っている親子も多いのが現状ではないでしょうか?

これらで悩む子をどうするべきか?それが非常に重要ですね。私が最も力を入れて解決したい分野の一つでもあります。
(もともとゲームにハマっていた過去があるからこそわかる点かも💦)

これらで悩む子ども達は、いわゆる「ゲーム障害および、その予備軍」でもある可能性があります。私も今思えば、人生の一部の時期を切り取ると、そういう状況だったのかな?と感じる事もあったりします。

私の時代では決して明るみに出ていなかった、この「ゲーム依存」
では令和時代の日本においてこの問題はどう取り扱われているのでしょうか?
その点について考えてみたいと思います。

日本におけるゲーム障害の実態

ゲーム障害は「ゲーム行動症」とも呼ばれています。(どちらが正しいという訳ではないです)

厚労科研報告書2019年(中高生のいる家庭に無作為に質問票を送付して回答)において、ゲーム依存を疑う若者の割合は、

✅10-14歳で男性9.2%、女性3.1%、全体6.2%
✅15-19歳で男性12.0%、女性3.0%、全体7.6%
✅20-24歳で男性6.2%、女性2.3%、全体4.1%
✅25-29歳で男性4.0%、女性1.5%、全体2.7%
✅全年齢で男性7.6%、女性2.5%、全体5.1%

となっています。この時点で若者の20人に1人はゲーム依存が疑われているという実態となっています・・・。
そして実態としても、ゲーム依存は男性に多い状況となっています。

世界を引き合いに出して考えてみますと、

※世界での青少年のゲーム障害の有病率(メタ解析)全世界では4.6%で日本は先程のデータで5.1%
(Fam JY Scandinabian Journal of Psychology,2018)
※オーストラリアでの2021年の直近の有病率では世界のゲーム行動症の有病率の推定率は3.05%
(Australian and New Zealand of Psychiatty 2021)
※最新の2022年の統計では、全体で3.3%(95%信頼区間:2.6-4.0)(男性8.5%、女性3.5%)
(Addict Behav. 2022 Mar:126:107183.)

となっており、全年齢での日本の5.1%のゲーム障害は世界に比べても高すぎるという訳ではなさそうです。

依存症対策全国センター集計 2022からのデータによると、

日本各所の医療機関にも、インターネット・ゲーム障害に関連する専門外来が存在していますが、
ゲーム行動症で専門医療機関(対象50施設)を受診した患者は令和3年度だけで

✅10-19歳が最も多く、男児で368名、女児81名
✅20-29歳で男性104名、女性20名
✅0-9歳で男児が35名、女児5名いた(全体の6%)

いやはやびっくりだったのが、全体の6%で0-9歳の時点でゲーム障害として診断されているというところが驚きです。
この時期はCOVID-19の影響を受けていたとはいえ、低年齢層がここまでの数に上っていることに驚愕です。

また、日本有数の専門施設の久里浜医療センターネット依存専門外来数の推移は、
12歳以下が2017年は6.8%だったのだが、2020年を皮切りに2022年では18%に急増しているようです。

ゲーム障害と判定された子の9割がオンラインゲームとなっていたことからも、オンラインゲームが日本の今のゲーム障害を引き起こすリスクの代名詞となっているのは間違いがないところかと思います。

世界的な動きを見てみますと、お隣の韓国では、2022年1月までは青少年保護法の一環でオンラインゲーム使用規制をかけていたほど。(現在は使用環境が変わった事からこの規制は撤廃されている)

また、中国では、オンラインゲームを「精神的アヘン」と例えてかなり厳しい使用規制をかけていた背景があります。土日祝日の20時から21時までの1時間(週3時間が限度)のみに徹底し、新規のオンラインゲーム作成を認可しない方針を徹底して18歳未満の75%以上が週3時間になったという事で、青少年のゲーム中毒問題は解決したと謳ってます。
現在は規制が若干緩和されたとの事ですがまた取り締まりの気配もあるようです。

ほんとかどうかは別として、さすが中国という感じではあります💦

インドではゲーム依存を減らすアプローチとして、オンラインゲーム開発会社に28%の税金を上乗せするといった報道もあるくらい。(インドの情報サイトmint

個人的には、日本にはこんな強烈なソーシャルゲーム(オンラインゲーム)規制はかかりにくい状況とはいえますが、世界ではやはり子どもの機会損失や社会の経済的損失について憂慮しているという背景も見て取れます。

では、このゲーム障害がもたらす影響というのはどういうものがあるのでしょうか?

ゲーム障害がもたらす障害と影響

世界保健機関(WHO)は2022年にゲーム障害を疾患認定しています。
WHOが提唱しているゲーム障害の定義としては、

➡ゲームのコントロールができない
➡日々の生活でゲームが最優先
➡ゲームによる明確な問題(家庭・学校・社会)
➡問題があるとわかっていてもゲームを続けてしまう(健康問題も含む)
この4点を満たし12ヶ月以上続く場合をゲーム行動症として診断する

上記を基準にしています。ただし実際の臨床現場では、この4つを満たしており問題と判定されれば12ヶ月以内でも診断をすることにされています。

オンラインゲーム依存に合併する問題としては、

✅身体的健康:脳萎縮、体力低下、骨密度低下、栄養の偏り、やせ症、肥満、眼精疲労、近視、腰痛、エコノミークラス症候群など
✅精神的健康:睡眠障害、昼夜逆転、ひきこもり、意欲低下、うつ状態、希死念慮、自殺企図など
✅学業・仕事面:遅刻・欠席、授業中の居眠り、成績低下、留年、退学、解雇など
✅経済面:多額の課金、投げ銭
✅家族面:家庭内暴力や暴言、親子の関係悪化、現実の友人減少など

上記のように多岐に渡るとされています。子どもの発達面や心身にもたらす影響、そして社会的な影響面も無視できない事から各国が注視していることもよくわかります。

特に、オンラインゲームにおいてほぼ必発といわれる症状が、昼夜逆転現象を生む「睡眠障害」とされてます。日中のパフォーマンスにもたらす影響はさることながら、子どもにおいては健全な発達や学業にも大きな影響を示すでしょう。

また、令和5年度版「ゲーム障害全国調査報告書」(ゲーム障害調査研究会)の報告によると、子ども(10歳から中学生)で年間にかなりの頻度でゲームする子どもに限定して行った機能障害該当におけるデータでは、下記のような問題を訴える子も多かったようです。

データとしてはあくまで傾向だけという事にはなりますが、上記のような問題行為でご家庭も子どもも悩んでいるという実態が浮き彫りになっています。

ゲーム障害と不登校の関連

不登校の要因は様々ありますが、 専門機関に来る50%程は不登校となっているというデータもあります。
子どもにおいては、単にゲームが好きとかゲームの時間などに依存しているのではなく、

※友達がいない
いじめられる
学校・教室が怖い
変な目で見られる
学校がつまらない
授業についていけない

などの理由が背後にあるケースが多いとされています。つまりゲームに逃避している状況も考える必要があるという事です。
逃避した状況で自分を満たす移行対象として、ゲームをしたい、ランキングを上げたい、オンラインフレンドと交流したい(仲間はずれになりたくない)、イベントや大会に出たいというように移行対象としてゲームに没頭する事が問題視されてます。

様々な側面がある中で、ゲームが一つの移行対象となっているのであれば、その移行対象をどう変えて行ってあげるのか?が大きなポイントになってくるという事で、様々な治療のスキームが建てられているという背景があります。

ゲームが子どもの発達にもたらす影響とは?

ではゲームが子どもにどういう影響を与えるのか?いくつかの報告を見て行ってみましょう。

※ゲーム行動症に伴う脳の変化(引用)Weinstein A et.al Dialogues in Clinical Neuroscience 2020
➡長期の過剰なゲームは様々な部位の灰白質体積や白質密度の低下をもたらしていた
➡関連部位は記憶、注意、衝動制御、情緒調節、運動機能など多岐にわたる
➡萎縮の結果、前頭前野や前帯状回の萎縮は前頭葉機能や衝動制御の低下に関連

上記の理由に関してはまだ明らかになっておらず、「結果そうなっていた」という報告が積み重なってきています。 さらにゲームをやめることで脳の萎縮がもとに戻るのか?という報告は現時点では殆どないとの事です。

スマホやゲームは子どもたちの学業成績低下に関連するのか?について調べている論文もあります。

【原文】Use of Technology and Its Association With Academic Performance and Life Satisfaction Among Children and Adolescents
【和文】児童・青少年におけるテクノロジーの利用と学業成績および生活満足度との関連性
【雑誌】Front Psychiatry. 2021 Nov 11:12:764054.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35689906/
【著者】Saray Ramírez:Universidad de los Andes(チリ)
※子どもや青少年の間でのゲーム・ネット使用が社会情緒的・認知的発達への影響を懸念
※42.1%の生徒が見知らぬ人とオンラインビデオゲームをしており、12.7%が睡眠不足
※学業成績の低下は、ネットいじめ経験、睡眠不足、、暴力的コンテンツへの暴露、平日と週末の使用時間、平日のビデオゲームプレイと関連していた
※夜9時以降にビデオゲームをすることが睡眠に影響すると認識している生徒ほど、学業成績が高かった
※テクノロジーの使用は子どものウェルビーイングを改善していない

上記データは世界的な動向のため、日本との文化の違いを加味して考えなければなりませんが、本人のゲームをプレイする自覚とあくまでも息抜きであり、ゲームは幸福度を上げていないという事を自覚することも大事なのかもしれません。

発達適齢期の子どもにおいて、座位でゲームをし続ける事の筋力低下の問題も指摘されていますね。

【原文】Musculoskeletal disorders in video gamers – a systematic review
【和文】ビデオゲーマーにおける筋骨格系障害-系統的レビュー
【雑誌】Mol Psychiatry. 2018 Jul;23(7):1566-1574.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35842605/
【著者】Chuck Tholl :German Sport University Cologne(ドイツ)
※座りがちなライフスタイルは筋骨格系障害の一因、若年性サルコペニア肥満にも繋がるリスク
※研究の大多数(11/12)はビデオゲームのプレイ時間による筋骨格系の機能低下を示唆
※最も痛みを訴えた身体部位は首(n=4)、肩(n=4)、背中(n=3)
※過度のビデオゲームプレイ時間(3時間/日以上)は、筋骨格系障害を予測する因子だった

どちらかというとPCを使う人が当てはまりますが、そもそもスマホやタブレットや専用ゲーム機も座りながらすることになりますので当てはまりそうかと。さらに発達適齢期の筋骨格系障害は長期的に関わる可能性があるので注意です。

ゲームが思春期の子どもの精神発達に与える研究も発表になっています。

🔴ゲームが思春期の子どもを実社会から遠ざけているのか?それとも実社会から遠ざかるからゲームに依存するのか?

【原文】Different Typologies of Gamers Are Associated with Mental Health: Are Students DOOMed?
【和文】ゲーマーの様々な類型がメンタルヘルスと関連:学生は破滅するのか?
【雑誌】Int J Environ Res Public Health. 2022 Nov 16;19(22):15058.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36429777/
【著者】Turi Reiten Finserås:Norwegian Institute of Public Health(ノルウェー)
※精神的苦痛を報告する割合はゲームに没頭する者が多かった
※ゲームに没頭する理由は実生活におけるフラストレーションも影響
※レクリエーション目的の精神的健康問題が少なかった
※女性のレクリエーションゲーマーは、女性の非ゲーマーと比較して精神的苦痛のレベルが高かった

メンタルヘルス的にもゲームに没頭する人には何かしらの背景があるとも考えられます。今までは男性が多く女性が少なかったゲーム依存ですが、女性でも増えてきており、その背景としてゲームに向かわざるを得なかった理由の解明が重要視されています。

日本でも徐々に増えつつある思春期女性ゲーマーは背景に何かしらの要因を抱えているケースがあります。日本における背景調査が急がれると共に、性差ごとの背景解明が急がれる題材でもあります。

子どものこころに対して親ができる事とは?

上記で述べたように、子どもがゲームにハマる原因は色々多角的な所にあります。なので、ゲームやインターネットをただでやめさせるという表面だけの対処では根本解決にならないどころか火に油を注ぐ結果になりやすいといわれます。

つまり、子どもの根源理由を知り、それに対する対応が必要になってくるという事になります。

ゲーム障害などを診察している、子どものこころ専門医の見解としては、

✅もともとの子どもの性格や特性、また環境的な悩みそのものがゲーム依存のリスク因子
✅ゲームに夢中となっている子も診察してみると、精神的合併症の傾向はあっても診断までつかないケースもある
✅神経発達症の有無(ADHDなど)がゲーム依存のリスク因子

とも述べており、もともとの子どものこころの状態は発達の状態によってもリスクが変わってくることがあります。
特に気をつけねばならないのは、ADHDとゲーム依存の関係性です。

ゲーム依存が社会的な問題となっていたお隣の韓国からのデータでは下記のような論文が出ています。これはよくゲーム依存を治療されている臨床の先生方が引用されている報告でもあります。

🔴【メタ解析】ADHDとゲーム障害、共通する脳機能障害とは?
【原文】Structural and Functional Brain Abnormalities in Internet Gaming Disorder and Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Comparative Meta-Analysis
【和文】インターネットゲーム障害と注意欠陥・多動性障害における脳の構造的・機能的異常:比較メタ分析
【雑誌】Front Psychiatry. 2021 Jul 1:12:679437.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34276447/
✅ADHDとゲーム障害における脳機能で前頭前皮質の灰白質容積の低下が確認
✅脳の報酬回路に共通の機能障害が確認された
✅ゲーム障害とADHDには共通した構造的・機能的変化が確認された

ADHDとゲーム障害の関連性を脳の観点で調査した結果、共通する障害が確認されているおり、ADHD傾向である子のゲーム依存により障害が重なる、また助長されるリスクもあるとされています。
刺激が多いゲームに対してのめりこむ傾向もあるため、特に親は注意が必要である。

久里浜医療センター460名の患者での動向を見ても、そのうちの61.2%がADHD傾向であったことが明らかになっているようですね。日本においても共通するリスクである可能性があります。

このようなリスクを回避するにはどうしたらよいか?色々なアプローチが考えられますが、

①ADHD治療薬による依存の解除、それと共に環境を整え調整する
②スタンダードな治療としての認知行動療法によるアプローチ
③家族療法や家族療法+認知行動療法が有効な可能性
④環境調整。ゲームから別の興味対象へ移行させる取り組み
⑤状況に応じて入院対応やゲーム離れのカウンセリングなどを検討

などがあります。あくまでも参考でありますので、実際の治療に関しては個々の医療機関の指示を参考にして下さいね。

この際のアプローチにおいて、親御さんの協力が必要不可欠になります。お子さんの状況における声掛けタイミングやどう声をかけていくか?という事は極めて難しく、かなりの工夫が必要になってきます。

各種論文において、家族療法やペアレントトレーニングの重要性なども語られており、ここで親御さんがアプローチ方法を学ぶことによって問題を回避する可能性を高める事もできます。

🔴【総説】ゲーム行動症からの脱却は親の関与が重要
【原文】Effectiveness of Available Treatments for Gaming Disorders in Children and Adolescents: A Systematic Review
【和訳】小児および青年におけるゲーム障害に対する利用可能な治療法の有効性
【著書】Cyberpsychol Behav Soc Netw. 2022 Jan;25(1):5-13(ギリシャ)
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34665018/
✅認知行動療法による治療が最多で有効と報告
✅うつ病やADHD合併例における薬物治療の有効性も示唆されている
✅家族療法や家族療法+認知行動療法が有効な可能性
✅ただし若年者8-12歳の治療に関する研究がほとんどない(人生の超早期にゲーム依存になると人生に影響)

より早期に養育者が子どもの状況に気づき、一手を打つことが重要とされています。
その際の親御さんの工夫の仕方やアプローチやタイミングを学ぶことが重要ともされています。

その一環で、「家族に対するペアレントトレーニングが子供のゲーム依存軽減と受診率を向上させた」という結果を示している論文も出ています。【引用】Lampropoulou P et al. Cyberpsychol Behav Soc Netw 2022

通常のペアレントトレーニングは小学生までしか対応されていませんが、下記のペアレントトレーニング(ペアレントアウェアネス)は思春期対応という事で、高校生までの子供を養育している親御さん向けのプログラムとして提供しています。
もし気になる方がおられましたらチェックしてみて下さい。

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ゲームって悪いことばっかなん!?

ここで一部、釈明を兼ねて述べておこうと思いますが、ゲームは決して「悪」ではありません
やはり過度な利用やその背景が問題になるわけであり、過度にならざるを得ない背景是正が重要という事になりますね。

実際にゲームのポジティブな面も研究されています。

代表的なのがオンラインゲーム以外の側面も持っていますが「マインクラフト」が有名です。マインクラフトを使った授業やクリエイティブな教育コンテンツも立ち上がるくらいです。ゲームでできる立体的なレゴみたいなもので、子ども達の創造性を高める事もできます。

いくつかその根拠となる論文を紹介したいと思います。

🔴マインクラフトが海馬に良い影響を与える可能性?
【原文】Improving Hippocampal Memory Through the Experience of a Rich Minecraft Environment
【和文】自閉症における個人化された特定の興味に対する報酬系の反応性の変化
【雑誌】Front Behav Neurosci. 2019 Mar 21:13:57.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29423135/
【著者】Gregory D Clemenson :University of California(US)
※海馬に関連した記憶が改善。マインクラフトの世界の探索量と、マインクラフト内に構築された構造の複雑さの両方が海馬に対してポジティブな影響を与えている可能性がある

🔴レゴを通じてASD(自閉症)の特的な才能も見えてくるかもしれない?
【原文】The impact of Lego® Therapy on cognitive skills in Autism Spectrum Disorders: a brief discussion
【和文】レゴ®セラピーが自閉症スペクトラムの認知スキルに与える影響
【雑誌】AIMS Neurosci. 2023 Jun 30;10(2):190-199. 【イタリア】
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37426776/
※レゴ®セラピーがASD児の認知能力という特定の領域に対してどのような効果があるのかを評価
※12ヶ月間にわたり、ASD児はレゴ®の専門オペレーターと週1回の面談を行い、コミュニケーション能力の向上、衝動性や多弁の軽減、親社会的行動の促進が確認された

🔴中高年に与えるマインクラフトの影響とは?
【原文】Playing Minecraft Improves Hippocampal-Associated Memory for Details in Middle Aged Adults
【和文】マインクラフトで遊ぶと、中年成人の海馬に関連する詳細記憶が改善する
【雑誌】Front Sports Act Living. 2021 Jul 5:3:685286.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35689906/
【著者】Craig E L Stark:University of California(US)
※中年期でも、以前に若年成人で観察されたマインクラフトをプレイすることによる効果と類似しており、海馬依存性記憶課題における記憶パフォーマンスの改善を示していた

などのように創造力を高めるという点やワーキングメモリーを改善する点でも有用性が示されています。

また、今回やたらと子供の成長に対して敵視(?)してしまっているオンラインゲームですが、
やはり過度にならなければ良い側面がある事は事実です。

🔴【記憶力】ヒトの記憶を司る「海馬」に対して悪影響を及ぼすゲームとは?
【原文】Impact of video games on plasticity of the hippocampus
【和文】ゲームが海馬に与える影響について
【雑誌】Mol Psychiatry. 2018 Jul;23(7):1566-1574.
【URL】https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28785110/
【著者】G L West :University of Montreal, Montreal(カナダ)
※海馬に悪影響だったゲームは、1人称シューティング・アクションゲームなどであった
※海馬依存の空間的戦略を用いるプレイヤーは、ゲームトレーニング後に海馬内の灰白質が増加していた
※3Dプラットフォームのゲームで訓練したケースでは海馬または嗅内皮質のいずれかに増加がみられた

一人黙々としてプレイするゲームは海馬を使わない状態で受動的なプレイになっている可能性があるようですね。

第三者との協力プレイや戦略的なシミュレーションゲームなど思考を広げるゲームならば海馬に対する影響もある可能性がありそうですね。ただこの短期的な海馬の活性化が長期に持続するのか?今後にどういう影響をもたらすのか?までは検証されていないので注意が必要かもしれません。

過激な描写を含むコンテンツや性的描写のあるような有害なコンテンツの選別は重要ですし、子どもにとって思考を広げるコンテンツになるかどうかは協力者次第ということもありそうです。もし親側に余裕があるならば、不特定多数でコミュニケーションを取る事で問題があるようなコンテンツは避けて、親とともにシミュレーションゲームを楽しむなどの選択もあってもいいのかもしれません。

また、ゲームの置き換えも有効です。ADHD児にとっても、そのアプローチが有効だったという報告もあります。

🔴【総説】ADHD者にとってのゲームとは?光と影に迫る
【原文】ADHD-Gaming Disorder Comorbidity in Children and Adolescents: A Narrative Review
【和題】小児および青年期におけるADHDとゲーム障害の併存:ナラティブレビュー
【著書】Children 2022, 9(10), 1528;
【URL】https://www.mdpi.com/2227-9067/9/10/1528
✅ゲームの種類によってはADHD者のトレーニングにはなる(パズルゲームや運動ゲームなど)
✅ADHDにとってゲームは有害なものばかりではないが、ゲームの種類は選ぶべき

ゲームは元々、療育の場でもソーシャルスキルトレーニングの一環でADHDやASDの療育の一環でも取り入れられてきている背景があります。依存性が高いゲームではなく、その場での反射神経を鍛えたり認知強化にも大きく寄与します。

昔、私もADHDの特性も強かったですが、ダンスダンスレボリューションをしてからかなり状況が良くなったような気がしています。落ち着くと共に、爽快感や疲労感があり、その後に勉強をするとすさまじくはかどったのを覚えています。

今の時代は中々ダンスダンスレボリューションをする状況ではないと思います(だって、PS2とかWiiですのでご家庭にない場合が多そうだもん)。そんな中、私も患者さんから教えて頂いたものでかなり有用なものがあると聞きましたので紹介です。

「リングフィットアドベンチャー」はかなりアクティブな動きとリズムを要求されます。しかもかなりの運動量になるので、ADHD児もハマるのではないかという事でした。(あくまでも個人の感想です)

ただ、オンラインゲームにハマる事から、これだったら自由にやってもいいよってさせてあげたりするのも一つの手かもしれません。またゲームに興味を持ち始めるタイミングでは、変にゲームに没頭させるよりも親の監視下でゲームを楽しませてあげるのもポイントかもしれません。(クリックすると別ページに飛びます)

また、これも教えてもらったのですが、すでにリングフィットアドベンチャー2も出ているという事で、Nintendo Switchにハマってしまって、モンスターハンターとかフォートナイトとかスプラトゥーンにハマってしまっている子はリングフィットアドベンチャーに置き換えてあげると奥行きが出て依存も緩和できるのかもしれませんね。

意外と「置き換え」+「自由にやってよい」+「勉強前にしても良い」は依存解除に効果的かもしれません。

最後に

今回の内容は、あくまでも日本におけるゲーム障害の実態にフォーカスをしてお届けしました。
実際に、ゲームにのめりこむことで身辺自立ができないという事で、児童精神科や小児神経科に親に連れ添われて子どもが通うというケースは少なくありません。

また昨今、不登校が歴代の記録を更新し増加傾向であることも分かってきています。氷山の一角でもありますし、色々な側面がある事も事実です。その背景の一つにもネットやゲームの問題も含まれてきます。

我々はテクノロジーとは切っても切り離せない時代に生きています。だからこそ、テクノロジーとどう向き合い、どう利益を享受するべきかが大事なのですが、「受け皿が整っていない」、また「社会的に課題を抱えている」子はテクノロジーに放浪されてしまいかねません。

「ネットリテラシー・ゲームリテラシー」とかいう言葉だけでは片づけられない問題に子ども達は直面しているのかもしれません。その背景はリアルとの折り合いが中々つかないからこその葛藤が大きく影響している可能性もありますし、子供の成長がまだ整っていないという事も十分あり得ます。

その点を、我々親も見出し、移行対象を適切な方面に向かせてあげる事も考えて行かねばならないポイントなのかもしれませんね。

不登校とゲーム関連に関して、子どものこころ専門医が臨床をベースにして書いている本も出ています。おそらくは私ごときのブログ記事よりもこっちの方が役に立つのかも・・・(;^ω^)

この本は具体的な解決方法を記載しているのではなく、養育者である我々が子どものこころをどう捉えてアプローチをしていくべきなのか?という極意が盛り込まれています。ゲームだけではなく、様々な状況で道に迷っている子に光の糸をどう紡いでいってあげるのか?という羅針盤的な内容となっています。

本記事や下記の書籍が皆様のお役に立てば幸いです。

感じた事などをコメントで頂けますと追加で調査するモチベーションにもなります。よろしくお願いいたします。(*´▽`*)

また動画編集超初心者であった頃に作ったゲーム障害に関連する動画も作っています(1年前なのでへたっぴ)。
動画作成方法とか知らず、べしゃりの間合いも全く分かっておらず、かなりまったりしゃべってますので、1.5倍速くらいで聴いて下さいな(それくらいがちょうどよいです)

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この記事を書いた人

海外での子育て事情や科学論文などから日本の育児に行かせる内容を情報共有していきます。自分の子が発達特性持ちなので、発達障害関連の話題も盛り込むかと思います。

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