非常に興味深いテーマがありましたので取り上げてみようと思います。日本ではいまだに議論が続いている「異次元の少子化対策」についてイギリスで新たな局面を迎えるというニュースがありました。
世界ではすでに様々な少子化対策が実行されておりその検証が進んでいますが、今回取り上げるイギリスにおいても非常に苦労している実態が見えてきています。少子化対策支援の予算確保に傾き過ぎると今度は「別の問題」が生じることになる実例でしょう。
今回は、意外と少子化対策の点で日本と似た傾向があるイギリスをピックアップして、いま日本が直面している問題と照らし合わせて解説をしてみようと思います。
日本もより一層「この問題」が問題化してくることが予想されるため取り上げました。
果たしてその内容とは何か!?本記事をご覧になって頂けましたら幸いです。
少子化問題って日本だけの問題じゃないのよね?世界でも問題なんでしょ?
世界でも少子化は問題になっていて、1990年台から喫緊の課題としても取り上げられていたね・・。あれから30年、少子化の歯止めをかけるために世界は具体的な対応を取ってきていたという背景があるね。
日本はいまだに「異次元の少子化対策」って言っているけど、世界はどんな「異次元の少子化対策」をしているのかしら?
日本は正直出遅れ感はあるけれど、欧州では積極的な手立てを講じている事で有名だよね。ハンガリーやフランスあたりは世界の中でも「異次元の少子化対策」を打ち出しているともいえるね。
世界で最も注目されている「異次元の少子化対策」を打ち出しているのはハンガリーといわれています。
過去記事にハンガリーの取り組みもまとめていますので参考にどうぞ
世界でも、「少子化対策」は「未来への投資」という認識のもと、1990年あたりから積極的に予算を組んで対応を進めてきています。ただそう簡単にいかない背景があります。少子化対策のためには「財源」の確保と、その財源を拡大する「労働力」「経済力」が必須となってくるためです。
日本もその予算案に苦しみながら、少子化対策の具体案を考えているという現状でもあるでしょう。
各国その対応に追われる中、イギリスからあるニュースが舞い込んできました。「育児支援改革の一環で、託児費用の無償化を一斉拡大」という内容です。
これは何かというと、COVID-19によるパンデミックによる労働力不足を補うために「育児休暇や育児のための離職者、現役を退いた高齢者を再び職場復帰させようとするプログラムです。
実際にイギリス政府はこの予算を2023年度の予算案を発表したようです。(2023年3月15日公表)
COVID-19の問題は致し方ないところはありますが、育休を取得している親の早期復職や、離職者の回帰を促される形になる点は皮肉なものと感じます。働き手世代が枯渇することで英経済が回らなくなってしまっているという問題が表面化してしまってます。
イギリスは男性でも育児休暇取得率は12~13%程です(2022年の日本とほぼ同じ取得率)。期間は2~3か月が多いようですね。育休は取得するかもしれませんが、今後はこれ以上の長期の取得は難しいのではないかともいわれています。また専業主婦として職場を離脱した女性も復職をさせようという動きも強まってきているようです。
その一環で、働き手に戻ってきてもらうように親世代の「育児無償化の予算の拡大」を軸として組んでいます。要は、子供をシッターや園に預けて職場復帰を早々にお願いしたい。ということになるのでしょう。加えてOBの方々を対象とした「高齢者復帰支援予算」も加味しているようです。
とにかく英国は市場での働き手がいない。さらにCOVID-19関連による失業者増に伴い、低所得者が拡大しているという問題に直面しています。
日本でいう「生活保護」にあたる英国版「社会保障給付」(2013年設立のユニバーサルクレジット)の給付者が拡大し2023年に入り590万人に達しているようです。(※厳密には日本の生活保護の内容とは異なりますのでご注意ください)
このユニバーサルクレジットの受給者が労働適齢期(15~65歳未満)の670万人が対象であることも話題になっています。
COVID-19の失業意外に就労に戻れない背景には、やはり親の育児参画が背景にあるようです。
現状ではフルワークで育児は厳しいため3歳未満の子供がいる親の43万人程が労働市場から離れてしまっている状況のようです。
そのため英政府が決断した内容として、
現時点で3~4歳を対象としている無償育児支援の枠を段階的に増やしていくという方向性に舵を切ったようですね。
【イギリス政府の無償育児支援内容】
- 2024年4月以降から2歳児に15時間/週の無料支援
- 2024年9月以降から生後9か月~3歳児に15時間/週の無料支援
- 2025年9月以降から生後9か月~3歳児に30時間/週の無料支援
段階的に拡大しているのは、一度に行うと対象者がかなり広がるため分散して行っているようです。
ただ、これを推進すると当然のことながら保育士やシッターが対応しきれないという問題が生じます。
今後急務となるのは、無償枠で拡大した子供たちのケアの受け皿をどうするのかが問われそうです。現状でもシッターや公共の園などの用意は追いついていないともいえそうですので・・。
また子育て世帯以外にも、労働経験者も市場に戻そうという取り組みも盛んで、50歳以上を対象とした復職プログラムの「リターナーシッププログラム」を導入しています。
高齢者のリスキニングを支援し、スキルトレーニングを提供する団体に6320万ポンドも投じることを明言しています。目安としては最大で8000人近くの50代以降の方々のリスキニングに寄与する見込みのようですね。早速2024年以降から64000か所でのトレーニング提供を行う段取りです。
また最も問題となっているユニバーサル・クレジットを受けている低所得者世帯は育児世帯と被っていることが多く、この世帯は育児支援金の前払いが可能となり、それを足掛かりとして仕事復帰ができるようになると見込んでいます。
元々ユニバーサル・クレジットでは654ポンド/月(約10万円/月)となっていましたが、仕事復帰した際は最大951ポンド/月(日本円で約15万円/月)となるので、むしろ働いたほうがお金がもらえるという内容になるとの事です。一番懸念されるのは、働いていないのに働いたふりをする虚偽申請になりますが、実際に就労確認が必要になるため、その対策にもなるともいえそうです。
この事から、育児による離職者世帯と低所得者世帯(生活保護世帯)と高齢者を総まとめで労働市場に駆り立てようとしています。
ここからが、日本に訪れるかもしれない一つの未来予想図の話になります。今後の日本の動向もよくよく考えて行く必要がありそうです。
このイギリスでの一連の出来事は、「将来の日本の縮図」のようにも思えてきませんか?日本も出生数80万人を切り、団塊世代Jrも引退していく見通しです。次世代の社会参加も出生数の低下から落ちていく見込みのため、日本の労働市場も縮小の一途をたどっていくでしょう。
労働者適格世代の人々も一時的に育児休業で会社を離れたり、育児や介護で離職してしまったりすると、日本の労働市場は確実に冷え込むことは間違いなさそうです。
となると、今後のシミュレーションとして、日本でもイギリスのように「男性育児休業者は最低限の育休期間にして母親は早期に子供を預けて業務復帰して欲しい」という圧力がかかることもあり得るかもしれません。
また、無職者や高齢者も徹底したリスキニングで職場復帰をはかり、何とか社会を支えて欲しいという政策を打ってくることも考えられます。
日本はイギリスと比べて文化や人々のマインドが大きく異なるところはありますが、過去の経緯を見ると、日本政府はどうも欧州の子育て施策を部分的に導入する傾向があります。
国が「少子化対策」を推進する際の「副作用」としての労働者の枯渇。この点も我々は考えておく必要がありそうです。
その点で我々も下記の点を念頭に置いて生活防衛を考えておく必要がありそうです。
高齢者が働く世代を支えるスキル
人生100年時代といわれて久しくなってきました。企業退職しても自身で活躍できる場を見つけておくことは、社会貢献や次世代への貢献の点でも非常に重要になってきそうです。自分だけのためではなく、社会や次世代のためにという点が一つのモチベーションとなるかもしれません。これこそが真のリスキニングに繋がっていくのではないでしょうか?
私も下の本を読み、これからの子供達が自分たちの輝ける仕事をするために、我々高齢者予備軍がその隅っこの仕事をこなすことで援護射撃をしてあげられる未来もあるものなのだな・・と共感を得ています。そのために私も今、「社会のためのリスキニング」に励んでおります!
まだまだ若いもんには負けられない。わしらを倒していけ!
ふざけた見出しになっていますが、今まで社会を支えてきた社会人OBの能力者たち、若い人と切磋琢磨してお互いのスキルを高め合うのも大事な点かと思います。「身近であり人生の先輩である高齢者」が若い人たちの「お手本」となるという方法もあるかもしれません。私も負けず嫌いなので、「若いもんに負けはせん!負けはせんぞぉ!」
つまり、自分の経験則に新たなリスキニングで得た力を加えて第一線でもまだ戦えるわけです!
意外と若い人たちと張り合う事が長寿の秘訣だったりして・・。そのリスキニングの教科書としては下記の本が最適かもしれません
子育て世代は育休後の安心した職場復帰を!
最も大事なのは、就労適齢期の育休明けの皆さんの労働力に他なりません。「育休くれるみたいだから、とっとこ」くらいの発想では企業から干される可能性もあります。かといって気を張りすぎてもこころのゆとりがなくなってしまいます。ちょうど合間を取った復職の仕方を育休取得中に学んでおくのも手です。そして、政府支援予定の「リスキニング」の場を使うもよし、大変な育児経験を活かしたスキルを職場に活かすもよし!我々子育て世代の工夫の仕方を見せつけてやりましょう!
イギリスの事例から学べる点としては、いつかは労働力の低下から、育児支援の揺り戻しがどこかに来るという事を事前に知っておいて我々も行動数必要があるという事だね。
育児期間は大変だから学ぶ時間は限定的だけど、この期間に得たものを企業に活かせるようにイメージを持っておくのも大事なのかもね
そうだね。育休明けの方々も、何かの理由で企業を離職した人々も、企業OBのご高齢の皆さんも自分の経験に+αをつけて、企業に売り込みに行くような時代に移行してきているのかもしれないね。我々も自分の付加価値を付けられるように頑張っていかなきゃいけないね
ちなみに子供の寝かしつけや子育て中のリスキニングについても書いた記事がありますので、お時間のある時にでも見て頂ければ幸いです(⌒∇⌒)
それでは皆様のよい「リスキニングライフ」を!
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