ASD(自閉スペクトラム症)は神経発達症の一つで、コミュニケーションや対人関係の困難、強いこだわりや限られた興味を示したり子供の頃から症状が現れる先天的な特性として知られていますが、大人になってから診断を受けるというケースが増えています。子どもの頃から症状があっても、それが大きな不適応に至らず、知的能力も平均以上の場合は、社会人になってから社会生活や人間関係における困難に気づくことがあります。
日本における有病率は、近年アップデートされた情報によると、青森県の5歳児のASDの調整有病率は3.22%であり、これまで想定されていた有病率よりも高い数値であることがわかりました。
Prevalence and cumulative incidence of autism spectrum disorders and the patterns of co-occurring neurodevelopmental disorders in a total population sample of 5-year-old children【Mol Autism. 2020 May 14;11(1):35.】(弘前大学の研究)
また、別の研究では、2009-2014年度に出生した日本全国の子どものASDの累積発生率が5歳で約2.75%であることが明らかにされました。
Trends in Autism Spectrum Disorder Diagnoses in Japan, 2009 to 2019【JAMA Netw Open. 2021 May 3;4(5):e219234】
医療的診断に基づく自閉スペクトラム症の発生率としては世界的に見て高い数値でありますが、日本においてASD有病率が増えてきている理由としては、日本における診断感度の高さと介入タイミングの速さによるものではないかと考察されています。
このように日本で、早期に診断されつつあるASDですが、その後の転機は一体どうなるのか?またどうなっていくのか?
この点は非常に注目されているポイントではないかと思います。
日本において、ASD170名の5歳から25歳までの20年に渡る縦断出生コホート研究(Y-LABiC)という観察研究が立ち上がっており、ASD児の長期予後をモニタリングをしていくという検証が今も行われています。ASD児を20年間追跡した調査は世界でもほぼなく、日本独自の取り組みとして非常に注目されている研究です。2022年のNHK番組にも取り上げられた内容となっています。それの論文版ということになりますね。
この研究の結果は、私も購読している【小児の精神と神経 63(3):201-209,2023】に掲載されている内容です。
今後のASD児の未来像を考えていく上で、非常に重要なエッセンスが詰まっているかと思います。
この研究の手動を担われているのが、横浜市総合リハビリテーションセンター発達精神科の岩佐光章先生。
この研究は20年近くフォローアップを行った研究結果となっていますが、これから先も追い続けていくとのことです。まさにASD児の人生を追体験していくことができる研究になっているのではないでしょうか?
この研究結果を
①研究結果全体の要約
②養育者の対応について
③PREPAREの原則に則ったASD字への対応
④青年期から成人期への道
⑤ASDとIQの経過に関する議論
という点でまとめています。
この記事はかなりのボリュームも有りますのでNoteにて300円の有料記事とさせていただいています。
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