自閉スペクトラム症(ASD)と診断された子どもに対する支援は、一般に認知、言語、行動、適応機能に焦点が当てられています。
これが支援現場では一般的ではありましたが、そもそも、ASD児や養育者の優先順位を反映しているかどうか?という点はなかなか見えにくいポイントでした。
いやー、ぶっちゃけですね。結構、支援現場を見ていると、支援者の想いと養育者のズレが半端ないな~と見ていて感じることも多いのですよ。実際。
主語は子どもに置くべきなのに、なぜか自分たちを主語にして行われているように感じるケースもあるわけです。そうなると、子どもも納得をして支援を受けられないということにもなりかねません。せっかくの支援効果が半減してしまうということにもなりかねないわけですね。皆様はどうお考えになるでしょうか?💦
実際に、ASD児を育てる養育者も、ASD児の本当の悩みについて見えにくいという問題もあったりします。子どもがその点を押し隠したままであると更に見えないですし、乳幼児期の発覚であった場合は、言語的にも意思疎通が難しいという問題もあったりするからです。そのため表面に見えている問題にフォーカスせざるを得ないというのが現状でもあります。
イギリスのボストン小児病院の発達医学部門からの報告で、この支援者と養育者の認識のズレはどこにあるのか?を確認するための聞き取り研究がありましたので紹介します。
文化圏は違いますが、子を思う支援者と養育者の視点の違いというところは日本においても参考になるかと思います。
それではその視点に違いがあるのかどうかを見た報告を紹介します。
【何について調べているか?】
ASDの転帰に対する親の認識を明らかにし、医療提供者が現在これらの懸念に対処できているかどうかの調査
参加者は以前にASDと診断された学齢児の親60名で自由形式のアンケートによる調査
【何がわかったか?】
「お子さんの機能のどの側面が最も重要か」で最も多く特定されたテーマは、”社会性”、”コミュニケーション”、”情緒”、”行動 “であった。
これらは、「他者とのコミュニケーショ ン、他者への理解」、「社会性」、「行動」が最も重要であるとしたランキング設問の結果と同様であった。一方で、支援者が尋ねるべきことについての質問で最も多かったテーマは “社会性”、次いで “何もない “であった。
【日常や今後にどう活かすか?】
養育者の注目しているポイントと支援者の注目ポイントは一致しているような状況でした。「社会性」という点において両者の目線は一致していたようです。
この点は想定内ではあったかと思います。社会的な行動面にフォーカスをされている支援となりますので、そのイメージがリンクしやすかったのかもしれません。この社会性には、言語や認知や行動や適応などが入って来ますので、結構広いイメージになる印象ではありますね。
日本での療育においても、「行動面」にフォーカスしたアプローチであるため、イギリスに近いようなニュアンスになるのではないでしょうか?一方で、最も一致していなかった点も浮き彫りとなっています。
それは「感情面」「情緒面」です。
感情も情緒も社会性に含まれるということにはなりますが、これらを養育者は単独で上げていましたが、支援者からは挙がってこなかったというのは一つのギャップとなってます。
子どものこころの状態はどうなのか?という気がかりを養育者が持つ一方で、それが支援者としては優先順位から外れているという不一致に繋がっています。目的(社会性の向上)のためには子どもの感情面も欠かせない要素の一つとなります。ここの一致を図ることができればより精度の高い支援ができる可能性がありますね。
子供の内面を知り、内面の葛藤を共有し合いながらも、それを乗り越えていくために行動面にフォーカスをしたアプローチを行っていく。
子どもへの支援効果を最大化するためにも、子供の内面にも意識を向けた対応といったものがより一層求められるような気がいたします。
コメント