拒食症としてしられる神経性やせ症。この疾患はコロナ前後で1.6倍にまで増加したと報告されています。
https://www.ncchd.go.jp/press/2021/211021.html
神経性やせ症(anorexia nervosa: AN)は摂食障害の一つといわれています。
Anorexia nervosaという病名は「精神的な理由」により食欲が低下することを意味していますが、この疾患を患っている人の多くは食欲不振で悩んでいるというより、理想の体型になるため、すなわち「痩せるための異常な食行動を示す」事で知られています。
このことから、「拒食症」という病名が一般に知れ渡っているという背景があります。
この神経性やせ症は、鏡で見る自分の姿の変化に一喜一憂を感じるのはもちろんのこと、体重計のグラム単位の体重変化にも執着を示すことにもなります。こうなってしまうと、食事も最低限にしてしまい1日の必要カロリーを満たさず衰弱し、生理機能の維持も困難になってしまいます。
症状の程度はヒトによって異なりますが、自分の体型への感じ方がおかしいと自覚はしながらも、
「食べるのがなぜか怖くてたまらない」「もっとやせなければと感じてしまう」と切迫感を感じてしまう事もあります。
✅モデルなどの職業柄、体型を維持しなければならない
✅インフルエンサーのあの人にようになりたい。少しでも近づくために痩せたい!
✅もてたい。周りを見返したい。
✅みんなダイエットしている。ダイエットしなきゃ仲間から外される
✅やせてないとだらしないと思われる。そうはなりたくない
✅好きな人に痩せてる人がかわいいといっていた。そうなるためにも絶対痩せる
上記にある内容は、実際に「神経性やせ症」を発症した方々がそうなってしまった最初の動機とされています。
特にCOVID-19の時期は閉鎖的な状況で、インターネットを主体にコミュニケーションを深めていました。
インフルエンサーの露出も増え、その人々へのあこがれや他者からの羨望のまなざしを得たい事からスタートしてしまっています。
そこから、やせなければならないという強い不安感と緊張感の中で苦しんでいた人たちも多かったといわれています。
そしてこれは、インフルエンサーに憧れる人たちだけではなく、「憧れの的になっているインフルエンサー」そのものも苦しめています。
海外事例ですが、カナダ人の女性インフルエンサーもスタイルを維持することに対して大きな不安を抱えていたとの事です。
【引用】Canadian influencer says she was at her ‘lowest self esteem’ when she was her thinnest (yahoo.com)
ザ・バーズ・パパイヤとして知られるカナダのインフルエンサーが、夫のシェーン・ランドリーと撮った結婚式の日や結婚生活中の写真をインスタグラムにアップしています。
写真には、彼女の体が年々変化している様子が写っています。
その中でこのランドリー夫人が述べているコメントが象徴的です。
「最も痩せていたときでさえ、不安と闘い、常に自分を変えなければならないと感じていた」
「一番痩せていたとき(左の写真)、私は今より50~60ポンド(22~30kg)も痩せていたし、不安も強かった。
自分のすべてが直すべきものだった”自尊心が最低だった。」
ランドリー夫人は、かつての不安のいくつかをまだ「克服中」であることを明かしています。
その受容の境地に達するには「時間がかかった」と述べています。
「一貫性が必要であり、自覚が必要であり、変化する身体と他の人間関係を目撃する必要がある」
とも述べており、自分自身がやせる事での期待で得られるものの限界を述べています。
「多くの女性が、特に恋愛関係において、痩せていなければならないというプレッシャーを感じている」
とランドリー夫人は述べており、さらにお産を通じて変わった体型を元に戻さなければならないという錯覚も拭い去る必要があると述べています。
実例を挙げましたが、対象となる相手が外見だけで物事を決めるのならばその関係性は長くは続かないでしょう。
容姿も一つの重要な要素ではありますが、健康を害して、自尊心を満たすためだけに追い求めるのは決して幸せなものではない・・・。という事にもなりそうです。
第一線で活動していたモデルも抱える葛藤。そこからの学びは大きそうです。
太りすぎも問題ですが、健康的な体系維持程度に留め、「他人からの目」の決別が神経性やせ症から脱却する大きな一歩になりそうです。
このための治療の一環に「認知行動療法」というものもあります。
認知行動療法とは、ストレスなどで固まって狭くなってしまった考えや行動を、自分の力で柔らかくほぐし、自由に考えたり行動したりするのを助ける心理療法です
支援者もこの手法を学び、悩んでいる人々への「自覚」や「認知」を強めてあげる事が治療の一歩になるのかもしれませんね
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