2023年未曽有の少子化が進んでいる日本。
日本のみならず、世界的に少子化の問題は一つの大きなテーマであり、各国はその取り組みや対策を余儀なくされています。
何も少子化は今始まった問題ではないです。下記の図は、「令和4年版少子化社会対策白書」からの引用ですが、
2010年ごろには日本も含め世界でも出生数は減少傾向です。そして2020年時点でも過去最少の出生数を記録しています。
このままでは様々な諸問題が生じるため、日本は少子化対策を講じる必要性を議論され続けていたわけです。
2023年を迎えるにあたり、世界では十分に「少子化対策」を議論し実践する時間はありました。
その中で試行錯誤を繰り返し、一つの異次元の少子化対策を行い、注目を集めている国家があります。
その国は「ハンガリー」です
このハンガリーが取り組んでいる少子化対策の抜本的対策の骨子を調べ上げましたので共有したいと思います。
いや、ほんとにすごい、このうち一つでも導入できれば大きいと思いますけどね。日本も。
いずれも2023年1月時点でのハンガリーが公的に実施している政策です。
これだけでどれだけ異次元=本気なのかがよくわかります。
①用途自由の無利子ローン日本円で約360万借りられる(1フォリオント=0.36円で計算)
(返済期間は20年、ローン開始5年以内に子供が生まれた場合は返済は3年延長)
②上記ローンはさらに第二子が生まれるとさらに3年返済期間延長の上、元本の30%免除
③第三子が生まれるとローン全額免除
※条件は最低3年間は就労(パートではなく社会保険料を納付する職種)する必要
※ローンを受けて5年以内に出産しなければ利子付きで返済する必要(これはちょっと辛い)
④マイホーム補助金(住宅補助プログラムCSOK)
※1人以上の子供がいる家庭で40㎡の共同住宅 or70㎡以上の戸建て(中古可)を購入する場合日本円で約25~28万支給※3人以上の子供がいる家庭で60㎡以上の新築共同住宅 or 90㎡以上の戸建て(新築のみ)を購入する場合約450万円支給https://dailynewshungary.com/hungarian-government-to-give-even-322-thousand-eur-for-families-to-build-greener-homes/
⑤男女ともに有給育児休暇は3年支給
⑥新婚世帯は2年間にわたり15ユーロ/月の税額控除(共働きの場合は年間2100円×12ヵ月×2人で年5万くらいの控除)
※1ユーロ141円で計算
⑦所得税控除(家族税控除)
※扶養家族が1人の場合、控除額は24000円(HUF:66,670)
※扶養家族が2人の場合、控除額は48000円(HUF:133,330)
※扶養家族が3人の場合、控除額は79200円(HUF:220,000)
(1フォリオント=0.36円で計算)
※児童手当を受けていても重複可能
※25歳以降も対象とするが、所得が18万円以内である事が条件
※2014年末までに結婚した夫婦は、月間で日本円12000円ほどの課税を免除することが可能となる
⑧若者に対する所得税免除(25歳未満、男女、移民者関係なく)
※2023年より満30歳の誕生日を迎える前に子供が生まれた女性は30歳の年末まで所得税免除(胎児12週以上が対象)
※シングル、既婚者、未婚者などで出産前の女性も対象
⑨学生ローン免除
※第1子出産時、3年間はローン返済を休止
※第2子出産時、学生ローン返済が半額免除
※第3子出産時、学生ローン全額免除
https://diakhitel.hu/english-page/
⑩祖父母育児手当
子育てをサポートする祖父母にも孫が2歳までの間、母親に変わって育児をした場合に支給
母親が職場復帰した場合には母親の育児手当がなくなる。
その代わりに祖父母に見てもらった場合は母親に支給されるはずだった育児手当が移行するという考え方になる。
母親が就労した際の給料の70%の支給額となっており、上限は最低賃金の2倍の70%が目安。大体日本円で8~9万ほどとなっている、
祖父母側の条件もあり、他の現金給付なし、他の有給の職についていないことなど種々の条件があるhttps://ec.europa.eu/social/main.jsp?catId=1113&langId=en&intPageId=4574
⑪国が体外受精費用の全額負担
※ハンガリーで不正が横行していた民間の不妊治療クリニックの運営を禁止し国有化。6つの不妊治療クリニックを買収し、診断治療全般を無料化
2022年までに4000人の赤ちゃんが生まれる見込み(この決断力と行動力はすさまじい)
※当時、不正な不妊治療クリニックは法外な値段を要求していたため、妊婦は西ヨーロッパに移民しハンガリーから離れることが憂慮されていた
ハンガリーがなぜここまで、本気になって少子化対策を行うのかには歴史的な背景があります。
それは過去、ハンガリーが積極的に移民を受け入れる方策を取っていたことから、移民者と国民との間の格差が常に政争の種として燻っていたこと。特にイスラム教徒の移民を受けていた事から右派の国家主義者とのいざこざも多く国民も辟易していたともいわれています。出生率においてはEU諸国の中でもハンガリーは平均より低い状況も続いていたようです。
この出生率が低い理由としては、
①不正不妊治療クリニックの横行
ハンガリーの女性が不妊治療を望んでも、ハンガリーでは不正不妊治療クリニックが横行しており、
近隣のデンマークに移民して出産するという事に繋がっていたといわれている。実際にデンマークでの不妊治療は力を入れており満足度も高いと称されていた。上記のグラフでもデンマークとハンガリーの差にこの問題が一役買っていた可能性
②過去の家族保護政策は裕福な家庭を対象としていた
推定75万近くいる貧しい人々(ジプシー)には税制上の優遇措置の恩恵は少なかった
③前政権では生活保護費を削減していた
出産や生活費に困窮するケースも多く、出生率の低下を招いた
④高齢化と若年者の困窮
ハンガリーも高齢化が進み、若い人が困窮する状況であった
⑤主義思想によるもの
詳しくはわかりませんが、子供を作って人類を増やすことが地球にとって良くないと考える人もいたりするそうです
⑥仕事のある西ヨーロッパに移民
若い人はより良い職を求めて西ヨーロッパに移民するケースも多かった
一部の点は日本の現状にも当てはまっているのではないでしょうか?
国の将来の基盤を作るのは「人財」にあると考えたヴィクトル・オルバン首相は移民に頼らずハンガリー人による子供たちを守るため!として、まさに異次元の少子化対策を断行したわけです。実際に成果は表れ始めていますね。
ただ、これらの制度を悪用しないかどうかのチェックも必要になってくるとも考えられます。
日本では決まってこの手の制度を悪用する家庭も出てきがちなので、これらの制度を守るためには使用する側もモラルが重要になるでしょう。
素晴らしい取り組みであるかと思いますので、ハンガリーの方々も順守して欲しいものですね。
ただし、出生率を上げた後は、ハンガリーは次の大きな局面を迎えることになります。先行投資した財源をプラスに立て直すことができるかです。これだけ多くの対策を打ち出しているので、ひずみは確実に出ています。
それでもなお、覚悟を持って「出生率を上げる」事に目標を定め不退転の覚悟で挑んでいるのだと思います。
日本には上記の政策を視野に入れる・・。その覚悟はあるのでしょうか?
今までにも日本においても、かなりの準備期間はあったはずです(およそ10年近く)。
しかし日本国民の特性や環境を見抜けず抜本的ではなかったため、今でも出生率は下降の一途です。
日本は・・児童手当の所得制限撤廃くらいで異次元と考えている・・というわけではない事を願うばかりです。
今の国民は、ひょっとすると、より目に見える「インセンティブ」を与えない限り、子供を産むという方向に向きそうにない社会になりつつありそう・・?そうであったならば、ちょっと悲しみを感じます。
まずは現日本政権には、明確な目標を持ち、ちゃんと予算を割いて勝負所を明確にして、世論を動かすリーダーシップを見せてもらいたいですね。
失敗から学ぶのも大事なんだけど、そろそろ日本も再始動をお願いしたい・・
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